食事による疾病治療も病院食の役割。患者さんの病状にあわせた栄養のコントロールも必要となります。
ここでは、常食をベースに6つの疾患別の展開例を紹介します。
常 食
糖尿病
展開のポイント&変更内容
通常、適正なエネルギー、栄養バランスのよい食事を基本とします。ビタミンやミネラルが不足しないように注意が必要です。
今回の「二身揚げメニュー」はレシピを変更せずに糖尿病食として提供できます。
脂質異常症/心疾患
展開のポイント&変更内容
低エネルギー、低脂肪、低塩、高食物繊維を基本とします。良質なたんぱく質を中心にして、植物油や魚類から脂質を摂るようにしましょう。
心疾患で、血中コレステロールや遊離脂肪酸が高い場合は、飽和脂肪酸を控える必要があるので、「二身揚げ」の豚ひき肉を魚のすり身に変えてください。
「まぐろの角煮」は塩分が高いため、献立から外します。食物繊維を十分に摂るため、茹でた枝豆やカボチャを加えてもよいでしょう。
閉塞性肺疾患
展開のポイント&変更内容
エネルギー代謝量が通常の1.2〜1.4倍になるため、たんぱく質は十分(70g以上/日)摂取し、また間食や補食を利用してエネルギー補給につとめましょう。
「二身揚げ」のこんにゃくはエネルギー量をあげるため、豚ひき肉に変更します。
胃疾患
展開のポイント&変更内容
胃内停滞時間が長い食品、繊維が多い食品、香辛料などの刺激物の使用は控えます。また味付けは薄味とし、極端に熱いものや冷たいものも避けましょう。
「白飯」を消化のよい「軟飯」に変更します。
「二身揚げ」のこんにゃくは消化を考慮して豆腐に変更します。
味の濃い「まぐろの角煮」を献立から外します。または「まぐろの霜降り」に変更してもよいでしょう。
「カットパイン」は繊維が多いので「機能性ヨーグルト」に変更します。
肝臓疾患
展開のポイント&変更内容
高たんぱく、高ビタミン、適正なエネルギーを基本とします。エネルギー過多にならない食品を選び、良質なたんぱく質を十分に摂取しましょう。
「二身揚げ」のこんにゃくを良質なたんぱく質を含んだ豆腐に変更します。
「高たんぱく飲料」を加え、たんぱく質摂取量を増やします。
腎臓疾患
展開のポイント&変更内容
たんぱく質制限時は、特に必要エネルギーの充足が重要となります。低たんぱく高エネルギーに調整された治療用特殊食品も積極的に利用しましょう。
「白飯」を「低たんぱくご飯」に変更します。
「二身揚げ」はエネルギー量をあげるため、衣に使用する油量を増やします。
「ニンジン豆乳ポタージュ」はたんぱく質を減らしてエネルギー量をあげるため、生クリームに変更します。
塩分、たんぱく質を減らすため「まぐろの角煮」を献立から外します。
「カットパイン」は、カリウムを減らしてエネルギー量をあげるため、缶詰パインとエネルギー強化食品に変更します。
監 修:朝日大学歯学部 医学博士 管理栄養士 芳本 信子
参考文献:「臨床栄養学実習-栄養食事アセスメントとケアプラン-[第4版]」(芳本信子編、学建書院、2018)