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初めてでも会心の出来映え!
農家の特産品づくりを
バックアップ
6次産業
食堂・惣菜・焼き菓子
髙橋農産 様
(岩手・盛岡市)
代表取締役 髙橋 信 さん
取締役 美喜子 さん
稲作や果樹栽培が盛んな岩手県・紫波町で、米やりんご、野菜を栽培する「髙橋農産」。手間ひまかけて育てても、規格外のりんごはほとんど値段がつかないことから、自分たちで加工・販売する第6次産業への取り組みを始めました。自慢のりんごから生まれるスイーツ…クックエブリオが素材の持ち味を引き出し、作ったご本人もビックリするほどの出来映えに。スチコンを使うのは今回が初めてだったという髙橋さんご夫妻に、クックエブリオの使い心地や作った商品などについてお話いただきました。
第6次産業に取り組んだきっかけを教えてください。
信さん 形や色付きのよくないりんごは商品にできないので、加工用として出荷することになります。おいしさは変わらないのに規格外というだけで、1kgの価格はわずか20〜30円になってしまうんです。だったら自分たちで加工して付加価値をつけた方がいいなと思いました。それと、去年の春に正社員を採用したので、農作業の閑散期(12〜2月)にできる仕事が必要になり、これも1つのきっかけになりました。
もともと、クックエブリオの利用は考えていたのですか?
信さん いいえ、そもそもこんな便利な調理機があることも知らなくて。農林水産省による第6次産業化の認定業者に選ばれて、乾燥りんごや乾燥野菜から始めてゼリーやジャムくらいまでを作れればいいかなと思っていたんです。だから、設備はガスコンロに鍋を想像していました。そんな時にホシザキさんからクックエブリオの話を聞いて、それじゃあ一度見てみようとテストキッチンに伺ったんです。
美喜子さん クックエブリオや真空包装機を使った調理をいろいろと見せてもらって「こんな料理までできるんだ!」とビックリしましたね。でも、操作は簡単なので、これなら使えそうだなと思いました。
信さん 実際に作るところを見て試食して、イメージ以上に様々な料理がおいしく作れることがわかり、ガスコンロと鍋で調理するより可能性が広がると思い、導入を決めました。
どんな商品を作られていますか?
美喜子さん りんごを使ったものだと、コンポートやアップルパイ、ジャム。ほかに、もち米を使ったごまもち、野菜を使ったピクルスもクックエブリオで調理しています。最初は自分たちでスチコン用のレシピが作れなかったので、作りたいメニューの基本レシピをホシザキさんに教えてもらいました。それを元に、材料の堅さや甘さなどにあわせて設定時間や味付けを調整して使っています。
信さん まだまだこれから、たくさん試作をして売れる商品を見極めていきたいと思います。ただ今は、農作業もあって試作がなかなか追いついていないんですが、製造については一度に大量に調理ができる機械なので、問題ないと思っています。あとは、販路ですね。現時点は委託がほとんどで、町の産直コーナーやスーパーなどで販売しています。今後は首都圏のアンテナショップや道の駅、インターネット通販などにも販路を広げていきたいです。
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信さんは、水稲の直播栽培の普及活動や高齢りんご農家の土地活用など、地元農業を活性化するための様々な取り組みも行っている。
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2012年12月に完成した真新しい厨房。調理作業は通常、美喜子さんと田村さんのお二人が担当する。
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材料を入れてスタートするだけ。操作が簡単だから、初めてでもすぐに使えるようになったそう。
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左から「りんご屋のアップルパイ」「ごまもっち」「アップルジャム」「パインみたいなアップル」。いずれも髙橋農産の自信作。
りんご作りのこだわりは?
信さん 農薬と化学肥料を半分以下に抑えた特別栽培で育てています。りんごは害虫や病気に弱いので特別栽培は難しいのですが、地域ぐるみで防除計画を立てるなど、岩手中央農協のりんご部会で8年前から取り組んでいます。その実績が認められて、2012年には日本農業賞の集団組織の部で大賞をいただきました。
クックエブリオの使い勝手はいかがですか?
美喜子さん 電子レンジと同じ感覚で使えるので、操作は簡単ですよ。ただ使い始めて間がないので、モードや温度、時間の設定は間違えないように気をつけています。レシピの分量と設定を守れば、誰でもおいしく仕上げられるので。
信さん 私が試しにクックエブリオで肉じゃがや角煮を作ったこともあります。レシピ通りにやったら煮崩れもしないし、味も染み込んで本当にうまくできたんですよ。
美喜子さん 主人は、普段からまったく調理をしないんですね。角煮なんて普通の家庭で作るには時間もかかるし、上手に作るのも難しい料理なのに、クックエブリオを使ったらおいしく仕上がっていて驚きました。
加工商品で優秀賞を受賞したと伺いましたが
美喜子さん 紫波町農林公社主催の「産直のまち『紫波』加工品フェア」で、ピクルスとごまもちで優秀賞をいただきました。町の産直コーナーで少しずつ販売し始めたので、商品への反応も知りたいと思って軽い気持ちで出品したら2つも入賞して、予想外の受賞にビックリしました。
今後の展望をお聞かせください。
信さん まだ立ち上げたばかりなので、これからが本番ですね。加工場の名前も「ポム・ダムール」(りんごの気持ち)に決まり、看板もこれから作ります。商品のパッケージも制作中ですし、売れる商品開発と販路の開拓などたくさんやることはありますが、農業と並ぶ経営の柱へ育てていければと思っています。
美喜子さん 今は基本のレシピを参考にアレンジして調理していますが、ゆくゆくはゼロからレシピの開発ができるようになりたいですね。それで自分たちの畑で取れるものを活かして、髙橋農産の看板商品を生み出していきたいです。
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ふじやジョナゴールド、黄王など15品種を特別栽培で育てている髙橋農園。最盛期には臨時スタッフにも協力してもらって収穫を行う。
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「わからないことは、いつでもホシザキさんに聞けるので安心です」と美喜子さん。
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町内の加工品フェアで優秀賞を受賞したピクルスは、スチームモードでわずか2分。しっかり熱を通しながら色鮮やかに仕上がる。
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レシピや味付けの調整は、二人で相談しながら進める。真剣ながらも和気あいあいとした雰囲気はまるで親子のよう。
取材日記
取材は3月半ば。まだしっかり雪が残っていて、りんご園もシーズンオフ。その分、取材時にはたくさんの加工品をいただきました。どれもりんごの味がしっかり楽しめるものばかり。中でも印象的だったのは、アップルパイ。サクッとした生地の中は、やわらかく甘く、ほどよい酸味のりんご。聞けば、「紅玉」という3月ではなかなか手に入らない品種で、酸味と香りがお菓子向きなんだそう。おいしさを引き立てるチョイスに「さすが、りんごのプロ!」と感心しました。