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適材適所でスチコンを活用し、
作業時間の短縮と
大幅なコスト削減を実現。
和食
和食
亀の井別荘「湯の岳庵」 様
(大分・由布市)
料理長 竹林 修 さん
いつかは泊まってみたい憧れの宿、由布院温泉を代表する「亀の井別荘」。その広大な敷地の奥に隠れ家のように佇む「湯の岳庵」は、宿泊客以外の方も利用できる郷土料理のお店です。山菜や野菜、川魚、肉など地元の食材にこだわり、そのときしか楽しめない旬の味を提供しています。地域と季節の味わいを大切にした料理づくり、そして作業の効率化やコストの削減に、クックエブリオが貢献しています。
メニューは季節によって変わると伺いましたが…
食材が旬を迎える時期にあわせてメニューを増やして、旬が過ぎればそのお料理も終わるので、常に流動的になりますね。いつ始まって終わるかも食材次第、その季節でしか楽しめない味ということになります。地元の食材にこだわって、この近郊や大分県内のものを使っています。野菜は農家さんと提携して、リクエストしたものを作っていただくことも行っていますね。
スチコンを利用されるのは、初めてですか?
そうですね。スチコン自体の存在は知っていたのですが、和食ではあまり使うことはないかなという認識でした。なので、デモを見るまでは、触ったり、味を確かめたりということはなかったですね。もう少し使いづらいものだろうと思っていたのですが、実際に触ってみると非常に簡単で、扱いやすかったです。
使ってみてよかった点を教えてください。
やっぱり時間を短縮できることですね。蒸し調理の場合だとお湯を沸かさなくてもいいし、焼くにしてもスチコンが温まるまでの時間が早いので、とても助かっています。スチコンさえあれば、蒸し器もオーブンも使わなくていいですからね。このことは時間短縮だけでなく、コスト削減にもつながっています。今まで使っていたガスオーブンは、温度を300℃へ上げるのに30分かかっていたんですね。その上、すぐ使うためにはずっとつけっぱなしにしておかないといけない。それが毎日のことなので、すごくガス代がかかっていたんです。スチコンに変えてからはその必要がなくなり、ガス代が安くなりましたよ。
料理の仕上がりはいかがでしたか?
野菜の下茹でなど、下ごしらえを中心に使うことが多いのですが、野菜を蒸すのにすごくいいですね。蒸し器で蒸したものと比べると、野菜の旨味が増して味がまったく違いますよ。ほかは、肉を焼くのにも使っています。鶏なんかはコンビモードを使うとふっくら焼き上がりますし。デザートでお出しするプリンも一度に大量に調理できるので、重宝していますね。私はこれまで、自分が納得したものしかお客さんに出していないんですね。それはスチコンを使っても同じです。だから、時間を短縮して効率を上げながら、今までと同じ仕上りにできるという点で、スチコンはとても優れた調理機器だと思いますよ。
どんな基準で作業をスチコンに移行しているのですか?
今までのメニューで、蒸し器よりもスチコンの方がいい、フライパンよりもスチコンの方がいいと思ったものをスチコンにシフトしていっています。オーブンで焼くような料理は、ほとんどスチコンを使いますね。ただ、なんでもかんでもスチコンで、というつもりはないんです。煮物はいろいろ試してみて、最終的に私は鍋でやろうという結論に至りました。たとえば、野菜には仕入れ先とか収穫した日で、まったく甘味が変わるものがあるんですね。それによって調味料を変えるので、分量はあってないようなものなんです。そういうやり方だと、スチコンの設定や調味料の分量を決めるのは難しいのかなと、断念しました。それ以外ではグリルで焼くものも多いです。グリルがホールに近い場所にあるので、お客さんの目にも止まるし、いいにおいも漂うんですね。だから、パフォーマンスという意味でもグリルがメインになることが多いんですよ。どちらかといえば、スチコンには裏方で頑張ってもらっているという感じですね。
スチコンで作った新しいメニューはありますか?
玉ねぎを器にした焼き物のメニューがいい感じに仕上がりました。玉ねぎの中の部分を抜いてみじん切りにして炒めたものを、生ハムや卵、チーズと一緒に玉ねぎの器に入れて焼くという料理なんですが、コンビモードの水蒸気量90%で調理すると、卵が半熟になって丁度よく仕上がる。これは、今までのオーブンではできなかったメニューです。スチコンのコンビモードではスチームを使うので、中まで熱が入るのが早いんですよ。オーブンでできなかったことが、スチコンでできるようになったのは、本当に大きな差だと思います。湯布院は食材があまり豊富ではないので、限られた食材でお客様に満足していただける料理を提供しなければならないんです。だから、湯布院の料理人は料理の研究に熱心ですよ。新しい料理は思いついたら、とりあえずやってみていますね。その結果でメニューにできるかどうかを判断して、試作を進めます。その都度、板場やスタッフのみんなに食べてもらって、その感想をもとに調整をして、最終的にメニューとしてお出しできるようになるといった感じですかね。スチコンを使った新メニューの開発はまだまだこれからなので、積極的にやっていきたいと思っています。
取材日記
取材は「湯の岳庵」の個室をお借りして行われました。室内にさりげなく置かれた家具や調度品には歴史を感じさせるものも多く、どこを撮影しても絵になる空間。いただいたお料理は、素材の味をそのまま生かしたものから、調理法に工夫が感じられるものまでさまざまで、どの料理も驚くほどおいしく、中でも「豊後牛の塩釜焼き」は、あまりのおいしさに言葉を失うほど。窓の向こうには木々が立ち並ぶ美しい景色が広がり、テーブルには旬の食材をふんだんに使ったこだわりの料理…。取材を忘れてしまうほどの、贅沢なひとときとなりました。