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長野発「サラダパプリカ」信州の大自然の中ふくよかに、つややかに、美しく育つ“箱入り娘”たち

肉厚で甘い、と評判の「サラダパプリカ」

手にとると、ずっしり。“お嬢さん”たちに言うのは失礼な言葉かもしれませんが、その重みは、肉厚な実であることを確かに感じさせるものでした。主にレストラン向けに出荷することを目的として栽培されているので、年間を通して大きさ、味など品質に偏りがなく、安定したものが収穫できるのが特長です。そして、生で食されることも多い野菜であることから、害虫駆除の農薬は使わず、独自の防除方法を採用していることで「えぐみが少なく、食味がよい」とお客様にも好評のサラダパプリカ。1年中快適な温度と湿度の保たれたハウスの中で「ぷくぷく&つやつや」の美人たちがすくすくと育っています。

サラダパプリカ アラカルト
サラダパプリカ アラカルト
3個入り(0.8kg) 1,050円
サラダパプリカを使ったレシピはこちら


本場ヨーロッパの栽培技術を信州の気候に合わせ、実現可能に。

信州サラダガーデンでは、1996年からパプリカ栽培を開始。当初、1本の木から収穫できたパプリカは、わずか2個でした。試行錯誤を繰り返し、研究を重ねていくうちに、パプリカの特性がわかりはじめ、1998年に現在の10a(アール)温室を建設しました。この頃、パプリカ以外の珍しい野菜作りにもトライしたものの、うまく軌道にのらず1年で撤退。これからどうしよう、と悩んでいたある日、友人のレストランオーナーが「小林さんの肉厚で甘いパプリカ、年中作ってくれたら買うよ」と言ってくれたことをきっかけに「レストランの方に喜んでもらえるパプリカを作ろう!」と決心したそうです。
それからというもの、小林さんの頭の中はパプリカ一色。サラダ商材として夏に需要が多いことがわかり、夏作用に30a(アール)温室を建設。次に待っていた“壁”は、本場ヨーロッパとの気温差でした。パプリカの特産地オランダは比較的冷涼な気候なので、その環境で生育するよう品種改良されているものを日本に持ってきても、そのまま植えただけでは育ちません。そこで、夏の温室内の冷却方法をいろいろと試みました。最初導入したのは、「加湿冷却」。この方法は連続して冷やすことが難しく、次に「除湿冷却クーラー」を導入。しかし日射しが強い日などは温室全体が冷えません。遮光シートを使って光の量を極端に減らすと植物は育たない…。壁に突き当たるたびに小林さんのチャレンジ精神は燃え上がります。「必要な光をなんとか入れながら冷やす方法はないか…」模索する日々が続き、ついに植物が必要な光だけを通す特殊フィルムを開発し、温室内を最適温度にすることに成功しました。
次に小林さんが着目したのは、栄養分や品質、そして生産効率の管理です。植物は炭酸ガスを吸って育つので、温室内の炭酸ガスの濃度を上げると、生産性は上がります。しかし、炭酸ガスを閉じ込めるため温室を完全に閉鎖した状態にすると、夏は温度が上がりすぎてしまいます。この問題は、天井の窓を少し開けることによって解決。換気しながら炭酸ガスの濃度も下げることなく、冷却することができました。炭酸ガスはパプリカが吸えば吸うほど甘みを増す、“気体の肥料”と呼べるほどの自然の恵み。それを最大限に生かしておいしいパプリカを作ることを、サラダガーデンはこの「半閉鎖型温室(セミクローズドグリーンハウス)」で実現可能にしました。


10a温室内では、たくさんの苗が
これから肉厚な実をつける
立派な木になるため成長中。


「糖分グルコース、フルクトース、果糖、など
甘み成分の中身はほとんど炭素で、そのもとは炭酸ガス。炭酸ガスをたくさん吸わせると糖分が増える。
だからうちのパプリカは甘いんです。」と小林さん。


サラダガーデンが独自開発した植物が必要とする
光だけを通す特殊フィルム。



小林さんが信頼をよせる
チーフグローワーの田中さん。
パプリカたちの主治医で、管理栄養士で、
母親、のような存在。


培地の中の状態をモニタリングしている装置。
オランダの会社とオンラインでつながっていて、
現地で計算されたデータが随時表示される。


モニタリング装置を見ながら水分量などを
グローワーの田中さんが調整する。
機械では判断できない細かい“お世話”は
すべて人の手で行われる。

ストレスをかけず愛情を注ぐ。子育てにも似たパプリカ作り。

パプリカの木は、温度の変化にとても敏感な植物。特に赤ちゃん(苗)の時期が一番デリケートで、水の量、肥料濃度、温度も一定にしなければならず、1℃でも違うと生育に大きな影響を及ぼします。「環境の変化にはすごく気をつけて、とにかくできるだけストレスを与えないようにしています」と言う小林さんは「そういう管理を徹底してやってくれるスタッフの力は大きいです」と、その大変さを話してくれました。
グローワーは温室内を毎日必ず見回って、すべての木の状態をチェックします。週に一度サンプリングし、実の数や、木の大きさを見ることで、パプリカの木の生理状態が「木自体が伸びようとする栄養生長」なのか「子孫を残そうとする生殖生長」なのかを調べます。その時の木の生理状態によって、水の量や肥料の量を決め、コントロールする。農業界でよく言われる「ストレスをかける」のではなく、サラダガーデンでは「ドライブ(drive)する」と言うのだそうです。パプリカの木という車に乗り、ハンドルを「こっち側(生長する)へ行けよ」「こんどはこっち(実をつける)だよ」と操縦してやる。パプリカは今どうしたいか見極めてから、木と対話しながら良い方向へ導いてあげるのです。
「病気が発生しているかどうか、見てわからない状態から、うちのグローワーは判断できるんです」小林さんが胸を張って話してくれたのは毎日毎日パプリカの木と向き合って、状態をチェックし管理しているチーフグローワーの田中裕治さんのこと。これまでの経験や直感で葉っぱや木のほんの少しの変化から、病原菌が入った部分がわかるので、すぐに処置でき、菌が蔓延するのを未然に防いでくれているそうです。いつも神経を研ぎすませてパプリカと向き合っているからこそ成し得る“職人技”なのでしょうね。


「おいしさ」と「安心」、そして「エコ」品質アップへのチャレンジは続く

パプリカを栽培しはじめた当時は「減農薬」「無農薬」「有機」、という言葉がもてはやされていた時代。でも、小林さんは『そのことだけでは本当の安全にはつながらない』と思い、ずっと「安全って何だろう?」と考え続けてきました。生で食べられることも多いパプリカの表面に農薬をスプレーする、なんていうのはもちろん論外。天然物由来の駆除剤も多く出回っていますが、「安全性の保証されていないものは使うべきじゃない」と小林さん。パプリカにつく害虫が嫌う虫を温室に放せば、害虫が発生しにくいのではないか、という発想から、さまざまな事例を研究し、大学教授の話も参考にしながらたどり着いた防除方法は「天敵昆虫」を使うことでした。本場オランダで仕入れたノウハウを活かし、実践しています。
そして、雨水タンクの水を利用して環境保全に貢献できる農業を目指しています。「農業って反自然的なことなのかもしれない」と感じている小林さんの“罪滅ぼし”の気持ちの現れでもありますが、もっと壮大な夢も持っています。
セミクローズドグリーンハウスで栽培するようになってから、使う水の量も肥料も半分くらいに減った、と言う小林さんは、「生産するために使ったエネルギーよりも、植物たちが吸う炭酸ガス(温暖化ガス)の方が増えれば、温室を建てるだけで、空気中の炭酸ガスが減る、ということになる。もしそうなれば、地球環境を守ることに貢献できているようでうれしいですね」と、信州の山々を見上げながら話してくれました。
これからチャレンジしていきたいことは?と尋ねると「同じ価格なら、世界で一番いい品質のパプリカを作りたい!」そして「パプリカを日本の食卓に普通に並ぶ食材にしたいです!」と力強く語ってくれました。
サラダガーデンの夢は、ここで育つパプリカの実のように、ぷくぷくと大きくなり、そしてキラキラと輝いています。


葉の裏についたアブラムシに、天敵昆虫コレマンアブラバチの幼虫が寄生してアブラムシを内側から食べてしまった様子。天敵昆虫自身はパプリカを食べないので、害虫だけを駆除できる。


30a温室の屋根の上に降った雨を集めて
パプリカの水分補給に使用している。
この雨水タンクには200トンの水
(=約14日分の水)がためられる。


手作業で、傷などがないか、パプリカの状態を見るスタッフのみなさん。厳しいチェックを通過したパプリカたちが全国のレストラン、小売店などに出荷される。


※掲載の内容は、2010年8月現在のものです。