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【熊本発】真生ミネラルしおキャベツ

速水しお野菜農場の真生ミネラルしおキャベツ

「不知火(しらぬい)海」とも呼ばれる八代海は、九州本島と天草諸島に囲まれた内海で、日本一閉鎖性の高い海といわれています。特徴的な地形を生かして古くから干拓が進められました。その最北端に広がる熊本県宇城市の「不知火干拓」は、戦後の食糧難時に拓かれ、現在ではキャベツなどの露地栽培が盛んです。速水健郎さんは、この地を襲った超大型台風の被害を乗り越え、「真生ミネラルしおキャベツ」を独自の栽培方法で生産。常識をくつがえす手法と、海のミネラルがもたらす甘さが、料理人や食通の注目を集め続けています。

【熊本発】真生ミネラルしおキャベツ

レギュラー箱(約10kg・6〜8個入り)
800円(税込・送料別) ※12月下旬〜3月下旬まで、A級品のみを選別して発送。
※価格は出荷する時期や年によって変動することがあります。
 ご了承ください。

「真生ミネラルしおキャベツ」を使ったレシピはこちら


想像をはるかに超える超大型台風の襲来

畳に用いられるイグサの一大産地として知られる八代海の干拓地。その最北端の宇城市沿岸部は不知火干拓と呼ばれ、戦後の食糧難を打開するために国主導で拓かれた土地です。近年ではキャベツなどの露地栽培が盛んにおこなわれ、速水健郎さんも父親から譲り受けた土地でキャベツや米の栽培を始めました。順調に収量を増やしていたところ、1999年9月末に超大型台風が九州西海岸を直撃。不知火干拓を取り囲む堤防を2メートルも超える高潮が襲い、田畑や住居をあっという間に飲み込みました。9月といえば稲は収穫、キャベツは成長期を迎える頃。田畑も農機も失った速水さんはなす術もなく、ヘドロに埋まった畑をただ眺めることしかできなかったと言います。

健気な姿に導かれ、キャベツ栽培の再開を決意

海水が染み込んだままでは2〜3年、不毛の土地というのが従来の常識。よって、早急な除塩作業が必要とされましたが、さまざまな問題が立ちはだかり、作業は一向に始まりません。もう農業は無理か…とあきらめの境地で泥に覆われた畑を眺めていると、ポツリ、ポツリと顔をのぞかせる緑色の痕跡が。近づいてみるとキャベツでした。高潮で全滅したとばかり思っていたキャベツが、驚くべき生命力で再生していたのです。この姿を見て速水さんは奮起し、もう一度農業と向き合うことを決意。翌年、心機一転してキャベツの栽培を再開しました。「健気なキャベツの姿から『とにかく作りなさい』と諭され、導かれている気がしたんです」と当時の心境を語ります。

水鳥が集う穏やかな八代海と、不知火干拓を囲む堤防。この堤防を2メートルも超える高潮が襲ったというから驚くばかり。
水鳥が集う穏やかな八代海と、不知火干拓を囲む堤防。この堤防を2メートルも超える高潮が襲ったというから驚くばかり。

これから収穫の最盛期を迎えるキャベツ畑。朝露を受けて一層ツヤを帯びた葉と、クッキリとした葉脈から生命力の強さが伝わってくる。 これから収穫の最盛期を迎えるキャベツ畑。朝露を受けて一層ツヤを帯びた葉と、クッキリとした葉脈から生命力の強さが伝わってくる。


速水さんが先頭を歩き、キャベツを選びながら包丁でカット。あ・うんの呼吸でスタッフがキャッチし、絶妙なバランスでカゴに積む。
速水さんが先頭を歩き、キャベツを選びながら包丁でカット。あ・うんの呼吸でスタッフがキャッチし、絶妙なバランスでカゴに積む。

栽培するキャベツは4種で、メインは「彩ひかり」。病気が出やすい品種だが、塩分のある畑との相性がよく、何より食味がいいという。
栽培するキャベツは4種で、メインは「彩ひかり」。病気が出やすい品種だが、塩分のある畑との相性がよく、何より食味がいいという。

高潮が運んだ海のミネラルで今までにないキャベツ誕生!

キャベツは7月末から9月上旬にかけて種蒔きをし、8月下旬から畑に定植します。畑を耕したところ、塩分を含んでいるせいか、土が一向に乾きません。乾きが悪いと病気の発生率は格段に上昇するため、不安は募るもイチかバチかで定植することに。心配をよそにキャベツは順調に生育しましたが、従来とは明らかに見た目が異なりました。葉は肉厚でツヤを帯び、見るからに力強いクッキリとした葉脈。試食してみると甘みが格段に強く、巻きがしっかりしているのに食感はやわらかです。「今までにないキャベツが誕生した!」と速水さんは確信。高潮がもたらした塩とミネラルにちなみ「真生ミネラルしおキャベツ」と命名しました。

大自然が与えてくれたチャンスを無駄にしたくない

「真生ミネラルしおキャベツ(以下、しおキャベツ)」の収量が見込めるようになったところで、販路開拓を始めた速水さん。PRのためにまずおこなったのは、県内外の著名なシェフを招いての試食会でした。プロからの高評価を受け、メディアにも取り上げられるようになり、独自の販売ルートを確保することに成功。東京銀座の熊本アンテナショップや、福岡の有名百貨店でも取引が始まり、注目される存在に。「大自然が与えてくれたチャンスと考え、期待を裏切ることなどないよう、毎日心してキャベツと向き合っています」と速水さん。一度は絶望の淵に追い詰められたものの、手を差し伸べてくれた大自然への畏怖と敬意を感じさせる言葉でした。


“独自に編み出した栽培方法で土壌のミネラル分をキープ

しおキャベツがミネラルや塩分を吸収するため、土壌の塩分濃度は年々下がります。そこで速水さんはニガリ成分の多い地下水を汲み上げ、地下に埋め込んだパイプからゆっくり染み込ませる方法を考案。創意工夫の甲斐あって、高潮の被害から20年経った今も、しおキャベツの特長をキープしています。また、連作障害を防ぐために、キャベツと小麦の輪作をおこない、キャベツはシーズン中総作付面積の半分しか栽培しません。こうして、ベストな状態を作り上げても、しおキャベツとして送り出せるA級品が採れるのは、多くて全体の4割程度。厳しい選果基準がブランドの信頼度を保ち続けているようです。

自然の懐の深さを感じる驚きの甘みと瑞々しさ

取材にうかがった12月下旬は、キャベツの収穫がスタートする時期。朝採れたばかりの中から速水さんがしおキャベツを選別し、その場でカットしてくれました。苦みや臭みはまったくなく、スイートコーンに通ずる上品な甘さが口一杯に広がります。パリッパリの食感と瑞々しさにも感動していると「火を通しても抜群にうまいんですよ」と速水さん。秘伝のレシピを参考に温かいキャベツ料理を自宅で作ってみたところ、納得のおいしさ。甘みを増したキャベツを噛み締めていると、「畑に緑の痕跡を見つけた日から、私は生まれ変わったんです」という速水さんの言葉が頭をよぎりました。この味わいは、紛れもなく大自然と速水さんのコラボ傑作です。

朝採れキャベツの中からしおキャベツを厳選。カットすると断面から水分があふれ、瑞々しさを物語る。スイートコーンのような甘さも格別だ。 朝採れキャベツの中からしおキャベツを厳選。カットすると断面から水分があふれ、瑞々しさを物語る。スイートコーンのような甘さも格別だ。

豚との相性が最高に良いというアドバイスを元に作った「ミルフィーユ蒸し」。しおキャベツと豚から潤沢にダシが出るため、味付けは塩と酒だけで十分。 豚との相性が最高に良いというアドバイスを元に作った「ミルフィーユ蒸し」。しおキャベツと豚から潤沢にダシが出るため、味付けは塩と酒だけで十分。


※掲載の内容は、2019年12月現在のものです。