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高知発「ミエルスイート」大地に根を張って育て、胸を張って世に出す、丹精凝らしたさつまいも

しっとりしていて上品な甘さ「ミエルスイート(さつまいも)」

ミエルは「はちみつ」という意味のフランス語。はちみつのように甘いことから「ミエルスイート」と名づけられたこのさつまいもは、安納芋が原種で、鈴木さんと生産者仲間が品種改良を重ね、栽培・管理方法を徹底的に研究して生み出したオリジナルブランドです。温かな印象のオレンジ色の実と“しっとり”とした食感が特長のミエルスイート。焼き芋でいただくとよくわかる上品な甘さは、スイーツに限らず、さまざまなお料理に幅広く利用できます。

「ミエルスイート(さつまいも)」
ミエルスイート(さつまいも)を使ったレシピはこちら


何も持たずに飛び込んだ農業の世界

大学卒業後、不動産開発の仕事に就いた鈴木さん。農地を宅地にして分譲する、という仕事に関わった時、農地法という厳しい法律で守られている「農業」に興味を持ったことが、Iターンのきっかけでした。学生時代にアウトドアスポーツを楽しみ、自然と触れ合う中で「大地に大きく根を張り、大空を見上げながらできる仕事に就きたい」と漠然と感じていたことを思い出し、「方向転換するなら今だ」と退職。農業学校に1年間通って研修を受けたあと、全国に渡って農地を探し、たどり着いたのが高知県南国市でした。

まだ「ない」ものを根付かせた、情熱という“種”

「早く一人前になりたくて、ただがむしゃらに働きました」と農業を始めたばかりの頃を振り返る鈴木さん。南国市で主に栽培されるのは夏に収穫する早堀りのさつまいも。地元の人の勧めもあり、最初は20a(アール)ほどの畑で早堀り芋の栽培から始めたそうです。7〜8年経ち、農業で生活できるようになった頃、秋に収穫する焼酎用の芋を作ろうと生産者の有志を集めて、まとめ役をしたこともあったそうですが、需要と供給のバランスが取れなくなり3年ほどで断念。しかし、途絶えなかったのは鈴木さんと他2名の新しい秋の芋作りにチャレンジしようという志でした。加工用の芋を作っていた頃から青果用の改良試験を進め、生まれたのが「ミエルスイート」です。

何も持たずに就農し16年目を迎えた2011年、念願の作業場と自宅を建設することができた。
何も持たずに就農し16年目を迎えた2011年、念願の作業場と自宅を建設することができた。

トラクターで土を掘り起こしてから、手作業でつるを引っ張って収穫する。
トラクターで土を掘り起こしてから、手作業でつるを引っ張って収穫する。

掘りたてのミエルスイート。収穫時は「どんなふうに育っているか楽しみ」と鈴木さんは言う。

掘りたてのミエルスイート。収穫時は「どんなふうに育っているか楽しみ」と鈴木さんは言う。

収穫後、ひとつひとつ人の手で選別される。
収穫後、ひとつひとつ人の手で選別される。

日射量が多く、良質な土壌で水はけのよい畑ですくすく育つミエルスイート。
日射量が多く、良質な土壌で水はけのよい畑ですくすく育つミエルスイート。

普通のさつまいもと比べると皮の色が薄く、まるっこい形をしている。
普通のさつまいもと比べると皮の色が薄く、
まるっこい形をしている。

“甘くない”現実の壁を乗り越え誕生したオンリーワンのさつまいも

ミエルスイートの“生い立ち”は生みの親である鈴木さんたちの「改良の繰り返し」なしには語れません。ミエルスイートの品種改良は異なる品種を受粉などで掛け合わせる方法ではなく「選抜」方式。畑で実った芋の中から突然変異などで際立った特長を持つ個体を選び、それを種芋にして作っていくのです。その種芋となる個体が出る確率は、数千分の1というから驚きです。3人がそれぞれに3〜4つの品種を試し、形や実の色、味などを比べながら改良を何度も重ねました。そして作り始めてから3年後、今のミエルスイートの原型となる芋ができたのです。

努力すればするほど結果は芋づる式に出る!

3人の汗と努力の結晶ともいえるミエルスイートは贅沢な環境でじっくりと丁寧に育てられています。基盤となる土作りへのこだわりは、連作障害を避けるため水稲との輪作をして毎回土壌を“リセット”すること。「極力農薬は使いたくない」という3人共通の意向から高知県基準の半分の量に抑えること。芋の健やかな生長を助ける必要な分だけの堆肥を入れてやること。この3つ以外にも細かな決まり事があるそうですが、鈴木さんは「自分だけでできる努力はどれだけでもできるから」とあまり多くを語りません。そして、ミエルスイートは収穫後の管理方法が特徴的。早堀りの芋は収穫後すぐに出荷できますが、ミエルスイートは味を熟成させるために約1〜2ヶ月間“寝かせる”「キュアリング期間」を置きます。保管庫内の温度や湿度を段階ごとに変えて、納得のいく味になるまで試食を繰り返し、出荷の時期を決めるそうです。
「力を注ぎ込んでやれば、それなりの収穫量、品質、売価などが自分にはね返ってくるんですよ」と鈴木さんが言う通り、手塩にかけて育てたミエルスイートのおいしさは人から人へと伝わり、地元の生協をはじめ、市場やスーパーなど年々取引先が増えていきました。


「結い」の気持ちで、”つながり”を作る

高知県の指導農業士として、就農を目指す人の支援や研修生の受け入れにも積極的に取り組み、新しい農業者の育成にも情熱を注ぐ鈴木さん。研修生にまず教えることは何かと伺うと「農業は一人では絶対できないこと」だと言います。誰かが困っている時は助け、自分が困った時は助けてもらう。この「結い」の気持ちを持ち、人とつながることが、自分の栽培技術や知識、販売先などを増やしていく。16年の経験からこのことを実感した鈴木さんは、自宅に来る研修生にもまず地域にとけ込む大切さを真っ先に伝えています。

目標を持ち、継続してこそ「結実」する

「作業ひとつひとつを一日一日積み重ねていくことが大きな力になる」と鈴木さんは農業の魅力を語ります。継続するために大切なことを伺うと「信念を曲げず、ブレない目標を持つこと」ときっぱり。“自分で”しっかり仕事を進め、継続の「結果」をきちんと見て実感することも重要、と長く続けるためのコツも教えてくれました。
南国市の特産品として根付きつつあるミエルスイートですが、目指すゴールは「形も味も“上品”なさつまいも」と言う鈴木さん。「形についてはまだ改良の余地がある」と、現状に満足することなく日々研鑽を重ね、お客様に胸を張って提供できるさつまいもに育つよう、今日も大地にしっかりと根を張る仕事をひとつひとつ積み重ねています。

「まず食べてみて」と取材前に用意してくださった焼き芋。オレンジ色にまずびっくり。きめ細かい食感とやさしい甘みに、思わずうっとり。
「まず食べてみて」と取材前に用意してくださった焼き芋。オレンジ色にまずびっくり。きめ細かい食感とやさしい甘みに、思わずうっとり。

「絶妙な温度と湿度をキープして美味しさを引き出してくれる」手編みの「こも」は愛用歴10数年とか。
「絶妙な温度と湿度をキープして美味しさを引き出してくれる」手編みの「こも」は愛用歴10数年とか。


※掲載の内容は、2011年9月現在のものです。