Vol.25 作りたてが一番!?仕込み済みは少なく?
飲食店のメニューには、あらかじめ仕込んでおき、注文後は盛り付けるだけで提供できるものもある。こうした仕込み済みの料理は効率的だ。しかし、おいしい料理は“作りたて”という考え方もある。仕込み済みの料理は増やさない方がいいのだろうか。
料理は、焼きたてや揚げたてなど、いわゆる“作りたて”がおいしいとされる。実際、作りたての料理はよりおいしく感じられることが多く、飲食店でも「作りたてを提供しています」といったPRをしている店が少なくない。
しかし、「作りたてが一番」と決めつける必要はない。仕込み済みの料理でも、おいしいものはおいしい。逆に、作りたてで提供する料理ばかり増やすと、調理オペレーションが大変になる。結果的に、料理の仕上がりにばらつきが出て、評判を落とすケースもある。
その点で、上手にメニューづくりを行なっている店は、作りたてで提供する料理と、仕込み済みですぐに提供できる料理を、バランスよくラインナップしている。仕込み済みでもおいしい冷菜や煮物などを、効果的にメニューに組み込んでいるのだ。繁盛居酒屋などのメニューを見ると、そうした仕込み済み料理の品数がかなり多い場合もある。
また、飲食店でスピード提供が可能な料理は、手作りで仕込んでおく料理と、既製品を活用する料理がある。これについても、既製品を一部活用しながら、一方で、手作りの料理を充実させるというように、やはりバランスを上手くとることが大切になる。
ただし、忘れてはならないのは、外食利用が日常化した現在、作りたてであろうが、仕込み済みの料理であろうが、そこそこおいしいというだけでは、高い商品価値が生まれないということだ。よりレベルの高いおいしさや、こだわりを訴求する工夫、盛り付けや提供演出、ストーリー性などで商品価値を高めることが重要だ。その点もきちんと強化しているなら、仕込済みの料理も大きな戦力となる。
『よろずや食堂』でも、「仕込み済みの料理は少なめにした方がいい」と単純に考えるのではなく、まずはメニュー全体のバランスを検討すべきだ。その結果、お客様に喜ばれ、店にとっても効率のよい仕込み済みの料理やスピード提供の料理が多くなるのは、決して間違った方向ではないと言える。
「するだけメニュー」をメニュー全体の5割に!
地方のターミナル駅にある居酒屋N店は、サラリーマンから若い女性客まで、幅広い客層をターゲットにしている。そして、混雑時は一挙にお客様が押し寄せる。しかし土地柄、お客様は提供時間にうるさかった。提供時間の遅い料理が少なくなかったN店は、それが原因で客数が伸び悩んでいた。そこで、
・盛るだけ
・切って盛るだけ
・すくうだけ
・オーブンに入れるだけ
・揚げるだけ
・レンジアップするだけ
という「するだけメニュー」を全体の5割に導入。提供スピードをアップした。
同時に、スピード提供の料理は、仕込みにひと手間かけて独自の味づくりにする、盛り付けや器づかいで商品価値を高めるといった工夫も実践。単にスピードアップを図るだけでなく、メニューの中身もしっかりと強化し、業績改善に成功している。
バランスよく仕込み済みの料理
飲食店のメニューは「作りたてが一番」と決めつける必要はない。仕込み済みの料理でも、おいしいものはおいしい。すばやく提供できる仕込み済みの料理は効率的でもある。繁盛居酒屋などでは、仕込み済みの料理を、メニューにバランスよく組み込んでいるケースが多い。