Vol.22 ランチの営業時間を延長するのは得策か
低迷する売上を増やす方法として、「営業時間の延長」を考える飲食店は少なくない。ただ、営業時間の延長は、新たな人件費が発生する。『よろずや食堂』では、ランチタイムの営業時間の延長を検討しているが、これは経営的に得策だろうか。
「営業時間の延長」は、マンガの『よろずや食堂』のようにランチの場合もあれば、夜の営業時間延長を検討するケースもある。実際、最近の居酒屋業界などを見ると、夜12時までだった営業を朝の5時までにするケースなども目立ち、中には24時間営業を新たに打ち出す店もある。一般の店でも、ランチと夜だけでなく、モーニングの営業開始を考えるなど、様々な形での営業時間延長がある。
こうした営業時間の延長は、見方によっては積極的な経営姿勢とも言える。中には成功している事例もあるだろう。
ただし、営業時間の延長が経営的に得策かどうかと言えば、基本的には「得策ではない」ケースが多いことを知っておく必要がある。よくあるのは、営業時間を延長して多少売上が増えても、それ以上に営業時間延長のための人件費コストがかさみ、結果として利益が増えないというケース。さらに、営業時間を延長したためにスタッフのモチベーションが下がることも多い。営業時間の延長で仕事量や労働時間が増え、精神的にも肉体的にも疲労がたまりやすくなり、元々、営業していた時間帯の仕事のモチベーションまで低下してしまうケースがあるのだ。
また、営業時間を延長しても、元々、営業していなかった時間帯のマーケティングが不十分なために失敗するケースもよくある。例えば、それまで営業していなかったアイドルタイムの営業を開始する際、午後2時から5時の時間帯にどんな地域ニーズがあり、すでにアイドルタイムに営業している店との差別化をどう打ち出すべきかなどの検討が不十分なのである。営業時間を延長するからには、そうした戦略面も重要なのだ。
最近は、マンガにもあるように、スポーツセンター帰りなどの少し遅いランチやカフェ利用、昼の宴会利用、団塊の世代のご夫婦やご婦人の集まりなど、アイドルタイムにもいま時の需要がある。戦略面では、そういうニーズにも着目するのである。
こうした需要もあることから、営業時間を延長すること自体がダメなわけではない。大事なのは、人手のことや戦略面を踏まえた上、よく検討することだ。また、実行に移す場合は、まずテスト的に延長し、様子を見ながら、より成功率の高い営業時間延長の方策を探ることも大切だ。
居酒屋の「和風カフェ」タイムが地域で人気に
H店は、地方のロードサイドにある和風の居酒屋だ。居酒屋でロードサイドにあるため、飲酒運転の罰則強化の影響などで売上を大きく落としていた。そこで、ランチ営業を開始。しかし、上手くいかなかった。一度はランチ営業をやめようかとも考えていた。
だが、周辺に、ボーリング場や電器量販店、大型エステなどができてきたため、いま一度ランチ営業の強化を考えた。その方法は、アイドルタイム(14時〜17時30分)も続けて営業するというもの。この時間帯を「和風カフェ」として営業したのだ。 その結果、近隣施設を利用するお客様ばかりでなく、団塊の世代の奥様が集まる場としても人気を獲得。地域のニーズを取り込んで売上挽回に成功した。この事例は、営業時間の延長が功を奏したケースだ。
営業時間の延長は十分に戦略を練る
営業時間の延長は攻めの経営強化である反面、失敗するケースも少なくない。営業時間延長のための人件費コストがかさみ、結果として利益が増えないケースなどが多いのだ。もちろん、成功する例もあるが、そのためには十分な戦略が必要である。