Vol.19 「生ビールのお客様」。言い方に問題あり?
「生ビールのお客様は?」「サワーのお客様は?」…など、商品をテーブルに運んだ際、どの商品がどのお客の注文商品なのかを確認しながら提供サービスを行なうケースが多い。多くの店で見かけるシーンだが、この言い方に問題はないのだろうか。
最近は、堅苦しさが敬遠されるということで、気軽さを重視した接客を行なう店が多く、それにともなって、飲食業界で使われる接客用語もカジュアル化が進んでいる。
しかし、中にはプロとしての自覚がなかったり、フレンドリー過ぎる言葉遣いでお客様を不快な気分にさせてしまうケースもある。もちろん堅苦しくなる必要はないが、やはり接客においては、「丁寧で正確な言葉遣い」が大前提である。
同じようにフレンドリーに接していても、お客様に「親しげでいい感じ」と取られる場合と、「馴れ馴れしくて不愉快だ!」と取られる場合がある。こうした差がつく要因の一つも、言葉遣いにあるのだ。
マンガの『よろずや食堂』の場面においても、まず、言葉遣いに問題がある。「生ビールのお客様?」ではなく、「生ビールご注文のお客様は?」と“ご注文”を省かないのが正解。こうした細かい言葉遣いの違いを、きちんと認識しておきたい。
例えば、利用料金が1,000円のお客様から1,000円を頂いた場合も、「1,000円お預かりいたします」というフレーズをよく聞くが、これも間違い。「1,000円丁度いただきます」というのが正解だろう。
また、『よろずや食堂』の場面では、言葉遣いの問題だけでなく、そもそも、もっとよい聞き方がある。
4人のうち3人がビール、1人が酎ハイなのだから、「酎ハイご注文のお客様は?」と聞けば、1人に答えてもらうだけで済む。人数が多い方に手をあげてもらうのは、ちょっと非効率だ。
そして、もう一歩進め、テーブルに「ポジショニング制」を導入してみてはどうだろう。『よろずや食堂』の場面では、それほど複雑な注文内容ではないので、基本的にはスタッフに注文内容を暗記してもらいたいところであるが、ポジショニング制にすれば記憶に頼る必要もなくなる。
ポジショニング制とは、テーブル番号だけでなく、お客様が座る各席にもポジショニングの符号を付けておくという方法。その符号は店ごとに決めてかまわないが、例えば、左奥から時計回りに1、2、3、4と決めておけばよい。こうしてポジショニングの符号を決めて注文伝票に記しておけば、注文を受けたスタッフと、提供サービスを行なうスタッフが変わってしまっても対応することができる。
ポジショニング制でサービス力を向上した居酒屋
D店は地方都市の商店街の中にある居酒屋である。グループ客が多いD店では、以前から一組当たりのドリンクの注文数が多い店であった。そのため、ドリンクの提供サービス時に、「生ビールのお客様?」「レモンサワーのお客様?」「梅酒のお客様?」などと聞くことが、当たり前になっていた。
そこで、伝票にポジショニングを書くことにした。例えば、6人のグループ客からドリンクの注文を受ける際、そのうち4人が生ビールで、残りの2人のうち1人がレモンサワー、もう1人が梅酒だったら、伝票に「レモンサワー1ー3(1番テーブルのポジション3)」、「梅酒1ー6(1番テーブルのポジション6)」と記入。これを見れば、レモンサワーと梅酒をどのお客様が注文したか分かり、残りのお客様が生ビールであることも分かる。
このポジショニング制によって、商品提供のサービスレベルを向上することに成功した。
丁寧で正確な言葉遣いを
接客においては、フレンドリー過ぎる言葉遣いでお客様を不快な気分にさせてしまうケースがある。堅苦しくなる必要はないが、接客では「丁寧で正確な言葉遣い」が大前提だ。好印象のフレンドリーな接客を行なうためにも、いま一度、接客の言葉遣いを見直したい。