Vol.10 “ベテラン”は、まかせておけばよいか?
飲食店のスタッフも、ベテランになると仕事に慣れ、自ら動いてくれるケースも多い。そうしたベテランスタッフに力を発揮してもらうには、仕事をまかせておけばよいのだろうか。それとも、まかせるだけではダメなのだろうか。
飲食店のスタッフは、新人もいればベテランもいる。しかし、お客様にとっては、新人かベテランかは関係なく、よりよいサービスを期待している。これは当然のことだ。
にもかかわらず、店のスタッフ教育では経営者や店長が、意識の中で新人とベテランをあまりに区別しすぎているケースが多い。ベテランだから安心で、新人だから心配だと頭から決めつけていることもしばしばある。こうした思い込みでスタッフ教育をすると、上手く人が育たないケースがあるので要注意だ。思い込みによる指導、評価の悪い例としては以下のようなものがあるので、まずチェックしておきたい。
a.部分的な評価で全体評価
例えば、部分的にすごく優秀な能力を持つスタッフがいたら、そのスタッフは他の能力も高いと思い込んでしまう傾向がある。
b.実際よりも高い評価
スタッフに嫌われたくないという思いや私的な感情があると、実際よりも高く評価してしまいやすい。
c.自分を基準にしてしまう
経営者や店長が、自分と似た思考や行動をするスタッフは評価し、逆の場合は評価しないというケースもよくある。同様に、自分の得意分野は厳しく評価し、不得手な分野は甘く評価してしまう場合もある。
d.最近のことで評価してしまう
評価する際、その間際に感じた印象を中心に評価してしまいやすい。最近の印象がよいと過大評価し、悪ければ過小評価するなどだ。
いかがだろうか。一つや二つ、当てはまったということはないだろうか。改めて言われると、思い込みによる指導や評価がよくないというのは、すぐに分かると思うが、実際にはついついやってしまいがちだ。新人とベテランの教育についても同様のことが言える。
まずは新人だから、ベテランだから…という固定概念や思い込みをリセットしよう。実はスタッフ全体のレベルを底上げするには、新人よりもベテランの育て方が大事になる場合も多いのだ。
というのも、ベテランの成長が止まってしまうと、結果的にそれを見た下のスタッフの成長も止まってしまう。逆にベテランのスタッフに対しても、常に一つ先のテーマを明確に提示している店は、おのずとレベルの高いスタッフ集団が育ちやすい。『よろずや食堂』のベテランスタッフ矢野さんの場合も、まかせるだけではダメだ。まかせることと教育が常に両輪でなければならない。
ベテランのレベル向上で職場に活気、離職も減少
地方都市にある居酒屋M店は、アルバイトスタッフが計16名在籍。人の入れ替わりが激しく、常に半分近くが新人である。当初、M店の店長は、その新人教育ばかりに注力していたが、結果的に離職率は高いままで、サービスレベルはあまり向上しなかった。そんなある日、信頼していたベテランアルバイトが、お客様から評判が悪いことに気がついた。そこで、ベテラン専門の研修を実施。するとレベルの高いベテランが増えたことで、新人スタッフにも目標ができた。お店全体のレベルが高まるとともに活気のある職場となり、新人の離職も減った。
ベテランも学び続ける教育を!
ベテランスタッフの成長が止まると、それを見た下のスタッフの成長も止まる。逆にベテランスタッフが常に学び続けている店はレベルの高いスタッフ集団が育ちやすい。ベテランスタッフに対しても仕事をまかせるだけでなく、教育し続けることが大切だ。