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【山口発】椹野川漁業協同組合の柑味鮎

椹野川漁業協同組合の柑味鮎

上流から河口域まで大小24の支流を含め、山口市内におさまる椹野川。人々の居住地域を流れる場所でも驚くほど透明度が高く、鮎やアマゴが生息し、夏には蛍が飛び交います。こうした椹野川水辺の環境を維持する目的で設立されたのが椹野川漁業協同組合。昭和40年代からは恵まれた水資源を活用し、鮎の養殖に着手しました。平成23年には山口大学との共同開発で、エサに工夫を凝らし、ミカンの香味を持つ「柑味鮎」の商品化に成功。淡水魚唯一のフルーツ魚として、さまざまな業界から注目を集めています。

椹野川漁業協同組合の柑味鮎

冷蔵柑味鮎 10尾6,300円(税・送料込)
冷凍柑味鮎 10尾4,800円(税・送料込) ※冷蔵品の出荷は6月初旬から8月15日頃まで。
 冷凍品は通年出荷可能。
※柑味鮎の出荷は金・土曜日のみです。
※北海道、沖縄を含む離島は別途1,500円送料がかかります。

「椹野川漁業協同組合の柑味鮎」を使ったレシピはこちら


椹野川の鮎を隠れた逸品で終わらせたくない

河口に近い流域でも、川底がハッキリ見えるほど清らかな水質を誇る椹野川。瀬戸内海に注ぎ込む椹野川には毎年鮎が産卵のために遡上し、友釣り目当ての釣り人たちがこぞって足を運びます。田中さんは岡山県で生まれ育ち、山口県内の大学で水産学を学び、同漁協に入所した筋金入りの魚好き。岡山では2時間かけて出かけていた鮎釣りが、市街地にある漁協の目の前でできると知り、心底驚いたといいます。これだけ水産資源に恵まれているにもかかわらず、高知の四万十川や岐阜の長良川の影に隠れ、知名度が上がらないのが田中さんらの悩みの種。そんな状況を打破しようと立ち上げたのが「柑味鮎」の開発プロジェクトです。

放流の技術を生かして鮎の養殖にも着手

もともと椹野川漁協は水辺環境を維持する目的で設立され、おもな事業は鮎種苗の放流でした。漁場全体の豊かさを維持するため、遡上した鮎の卵を孵化させて養殖池で育て、翌春に稚魚を各河川へと放流します。その量は10トンにものぼり、山口県内の河川で放流する稚魚の2/3を占めるとか。放流時期を迎えて大量の稚魚が旅立つと、養殖池は空っぽになってしまいます。半年近くも池を遊ばせておいてはもったいないと、昭和40年台後半から鮎の養殖事業を始めることに。漁協の目と鼻の先には山陽路随一の湯量を誇る湯田温泉があるため、旅館や飲食店での需要も見込んでのスタートでした。

椹野川の河川敷に設けられた鮎の養殖池。川を挟んで向こう側は湯田温泉、手前には住宅地や山口大学のキャンパスが広がり、人々の生活圏と隣接した立地である。
椹野川の河川敷に設けられた鮎の養殖池。川を挟んで向こう側は湯田温泉、手前には住宅地や山口大学のキャンパスが広がり、人々の生活圏と隣接した立地である。

これから養殖池を満たすのは、椹野川の伏流水と地下から汲み上げた井戸水をブレンドした水。田中さん曰く、飲用水としても大変おいしい水だという。 養殖池を満たすのは、椹野川の伏流水と地下から汲み上げた井戸水をブレンドした水。田中さん曰く、飲用水としても大変おいしい水だという。


お客様からオーダーが入ると、漁協内にアナウンスが流れ、担当の方が養殖池で鮎を捕獲。山口市内であれば、ピチピチに活かしたまま届けるそうだ。
お客様からオーダーが入ると、漁協内にアナウンスが流れ、担当の方が養殖池で鮎を捕獲。山口市内であれば、ピチピチに活かしたまま届けるそうだ。

甘酸っぱいミカンの香りのするエサを池に放った途端、水面から鮎が身を乗り出す。我先にと食べ始める姿は圧巻だ。
甘酸っぱいミカンの香りのするエサを池に放った途端、水面から鮎が身を乗り出す。我先にと食べ始める姿は圧巻だ。

山口大学の農学部教授とフルーツ魚の共同開発スタート

養殖事業も軌道に乗り、市内での需要も順調に推移しましたが、全国的な知名度は今ひとつ上がりません。何か手立てはないかと田中さんらが頭をひねっていた折、山口大学農学部の赤壁善彦教授から声がかかりました。赤壁教授は香りの研究を専門にし、山口県が誇るミカンの加工品開発にも参画した人物です。加工品を作る過程で出る、残渣を活用する研究も進めており、ミカンの皮の残渣を鮎に与える試みを漁協に提案したのでした。ブリやヒラメなど、海水魚にフルーツを与えて一定の効果を狙う「フルーツ魚」の養殖はすでにありましたが、淡水魚では前例なし。「これは面白い!」と田中さんらは賛同し、平成22年から共同開発が始まりました。

ミカンの香り弾ける柑味鮎誕生!

天然の鮎はスイカやキュウリの香りがし、別名「香魚」とも呼ばれています。鮎の香りを決定づけるのはエサにしている川苔で、生息する区域によって香味が異なるのはこのためです。その特性に着目し、ミカンの皮の残渣を与えることで、川魚特有の臭みを抑えられるのでは?というのが赤壁教授の仮説でした。実際に与えてみると生臭さはおろか、柑橘のしぼり汁をギュッとふりかけたような爽やかさが前面に表れました。また、鉄分の宝庫である内臓もさっぱりとして苦味がなく、「鮎の内臓=苦い」という先入観を払拭する味わいです。何度となく試験を繰り返してバランスの良い香りと味わいに調整し、平成23年晴れて「柑味鮎」が誕生しました。


“鮎ファンを増やして川魚離れを食い止めたい

こうして誕生した淡水魚初のフルーツ魚「柑味鮎」ですが、食べた人の反応はさまざまでした。川魚が苦手な方からは「生臭くなくて食べやすい」と好評を得るも、天然鮎を食べ慣れた方からは「鮎らしさが足りない」と厳しい意見も。双方の声を受け止めた上で、「天然、養殖、そして第三の鮎である柑味鮎。それぞれの違いを個性と捉えるようになりました。柑味鮎をきっかけに椹野川の鮎を知ってもらえましたし、川魚離れにも一石を投じられたように思います」と田中さん。メディアにも多数取り上げられ、「山口市食と地域のブランド形成事業」にも採択されました。毎年6月にはイベントを催し、今ではすっかり地域に根差した特産品となっています。

のびのび育った柑味鮎をもっと身近に

梅雨入り前の6月初旬、養殖池を見学させていただいたところ、ちょうどエサやりの時間でした。給餌器から柑味鮎用のエサが放たれると、甘く爽やかなミカンの香りが漂います。水面に鮎たちが集まって無数の波紋を作り、身を乗り出すように食べる様子は頼もしい限り。「うちの池は放養密度が低いので、鮎たちにかかるストレスが低く、のびのび育つんですよ」と田中さん。今後は手軽に食べられる加工品など、商品開発にも力を入れる予定だそうです。開発途中だという柑味鮎ジャーキーを試食すると、塩のみの調味にもかかわらず、柑橘の味わいが広がる未知の感覚。我々が目を丸くして驚いている様子を見、田中さんは満足そうに微笑んでいました。

6月初旬におこなわれる「ふしの川あゆの日まつり」。柑味鮎の試食会や鮎のつかみ取り大会などが催され、毎年市内外から多くの人々が訪れる。 6月初旬におこなわれる「ふしの川あゆの日まつり」。柑味鮎の試食会や鮎のつかみ取り大会などが催され、毎年市内外から多くの人々が訪れる。

柑橘の香りが際立つ塩焼きは生臭さがほとんどなく、鮎初心者にもおすすめ。また、川魚に馴染みのない方にも手軽に食べて欲しいと「柑味鮎ジャーキー」と「柑味鮎の一夜干し」を開発中だ。 柑橘の香りが際立つ塩焼きは生臭さがほとんどなく、鮎初心者にもおすすめ。また、川魚に馴染みのない方にも手軽に食べて欲しいと「柑味鮎ジャーキー」と「柑味鮎の一夜干し」を開発中だ。


※掲載の内容は、2020年6月現在のものです。