【青森発】青森シャモロック:血筋と育ちがモノを言う 名だたる地鶏をしのぐ旨味
「青森シャモロック」は青森畜産試験場養鶏部によって研究・開発され、平成2年に誕生しました。気性は荒いけれど肉質の良い「横斑シャモ」を父に、穏やかな性格で旨味の強い「速羽性横斑プリマスロック」を母に持つ一代交雑種。この掛け合わせで生まれたもののみ、青森シャモロックとなります。両親の優れた特長を引き継いで病気にも強いため、抗生剤などは一切与えていません。名だたる地鶏に勝るとも劣らない肉質と旨味、そして安全性が買われ、首都圏を中心に知名度が急上昇しています。
青森シャモロック正肉1羽分
(モモ・ムネ・ササミ各2枚、約1kg分)
5,400円(税・送料別)
「おおわにシャモロックファーム」を運営している大鰐振興は、もともと建設業を生業にしていました。時代の移り変わりとともに、売り上げが陰りを見せ始めた時、宮腰さんのお父様は青森県がブランド化を推進している「青森シャモロック」に着目。推進委員会の指定農場に名乗りを上げ、県の指導のもとに飼育を開始したのです。建設業の技術力と人力を活かして鶏舎などはすべて自社で建て、平成18年より本格稼働させました。津軽藩の湯治場でもあり、太宰治とも縁のある温泉街として観光に重点を置いてきた大鰐町。この故郷に新たな特産品を作り、振興につなげたいという宮腰さん親子の強い思いも、設立の原動力になったといいます。
おおわにシャモロックファームでは、より自然に近い環境で飼育するため、籾殻を敷き、日照や風通しなど、細部にわたって配慮しています。飼育スペースは特定JAS規格の基準が1m²当たり10羽に対し、1m²当たり5羽までに制限。基準の2倍以上のスペースでのびのびと平飼いすることで、適度な運動が可能となり、引き締まった肉質に育ちます。また、一般のブロイラーが50日程度で出荷されるところ、オス100日、メス120日と倍以上の時間をかけてじっくりと肥育。ストレスフリーの環境下で育つうえ、元来持ち合わせている抗病性もあり、ファーム開設以来、抗生剤は一切与えていません。
見渡す限り緑が広がる「おおわにシャモロックファーム」周辺の環境。清らかな水と空気が、健康で質の良い青森シャモロックを育て上げる。
青森シャモロックの孵化は青森県畜産試験場で一元管理。ファームには雛の状態で入る。生後30日頃に性別が判別できるようになり、その後はオス・メス別々の鶏舎で肥育。
黒っぽい横斑がメスで生後108日経過。ややグレーがかった横斑がオスで生後80日。警戒心をあらわにしたり、興味津々で近づいてくる個体まで性格は様々。温度・湿度・肥育状態を毎日記録して管理する。
群れの中でいじめが発生すると、いじめられた個体を鶏舎隅の隠れ家的スペースで保護。この子はいじめられて以来、飼育担当の佐藤金也さんになついている。「めいごっこ(津軽弁で愛らしいの意)」だそうだ。
こうして育てた青森シャモロックですが、食鳥処理をしなければ飲食店や精肉店に出荷できません。飼育を始めたばかりの頃は、ファームから車で2時間ほど離れた処理場に委託し、運び入れた鶏は翌日に引き取る方法を取っていました。しかしこれではロスタイムが多く、鮮度も低下してしまいます。そこで年間の処理羽数が30万羽以下の「認定小規模食鳥処理場」をファーム内に設立し、飼育→食鳥処理→出荷の一貫体制を確立。これによって鶏舎からストレスをかけず運び込み、衛生管理の行き届いた空間で食鳥処理場ができるようになりました。毎日鮮度抜群の状態で出荷されています。
名だたる地鶏よりも、旨味成分のグルタミン酸とイノシン酸をより多く含み(※)、長時間加熱してもパサつかない青森シャモロック。実際にムネ肉で鶏ハムを作ってみましたが、しっとりなめらか。塩のみの調味でも旨味がほとばしり、目からウロコのおいしさでした。とはいえ後発品種のため、全国的な知名度はありません。試食をしてもらっても「確かにおいしいけど、同じ価格だったら、知名度のある地鶏がいい」と採用を断られるばかり。食鳥処分しても行き先がなく、一時は在庫が自社の冷凍庫に入りきらないこともあったそうです。しかし、宮腰さんは心折れることなく青森県産品のイベントなどへ積極的に出店し、地道な営業を続けました。
※ 青森畜産試験場養鶏部調べ
http://www.o-wani-shinkou.jp/A-syamorock/index.html
ファームの開設から8年が経った頃、大きな転機が訪れました。大手コンビニチェーンのバイヤーの目に止まり、お歳暮のメイン商材として青森シャモロックの鍋セットが採用されたのです。初年度に限定2000セットが即完売すると、翌年は4000セットに増やすもまたもや完売。知名度が一気に上がりました。首都圏では既存の地鶏から変更する飲食店も増え、ミシュラン一つ星を獲得した焼き鳥店でも採用に。シェフが年に2回ほどファームを訪れると聞き、「緊張しませんか?」と宮腰さんに質問したところ「何も後ろめたいことはないから、緊張しません」と即答。その表情には自信が満ちあふれていました。
ファーム設立からの10年を振り返り、「ここにきてようやく手応えを感じています。今後は地元の人にもアピールしたいですね。知ってはいるけど食べたことない、という方がほとんどなので。大鰐町と青森県を代表する特産品として、誇りに思っていただけたら嬉しいです」と語る宮腰さん。一時は満杯になっていた冷凍庫も現在ではガランとした状態になり、処理した肉はほぼ行き先が決まっているそうです。来年には鶏舎を増設し、出荷体制を強化する見込み。青い森に囲まれ、澄み切った空気を胸いっぱいに吸った青森シャモロックが、日本全国津々浦々へと羽ばたく日は近いかもしれません。
ファーム内に設けられた認定小規模食鳥処理場。鶏舎から運び入れてその日の内に処理をし、パッキング後に冷却して翌日出荷。作業動線を考え、衛生管理と鮮度管理も徹底している。
ムネ肉はパサつくイメージが強いが、青森シャモロックのムネ肉はその概念を覆す食感。鍋料理に入れると肉がおいしいのはもちろん、スープが断然うまくなると、お歳暮の贈答品としても好評を得ている。
※掲載の内容は、2016年9月現在のものです。