きっちんぷらす
スチコンレシピ 1233 recipe

【北海道発】とかちポワロー:限りない好奇心と北の大地が生みの親。「とかちポワロー」

加熱調理で旨味と甘み引き立つ「とかちポワロー」

日本の白ネギよりも太くてズッシリと目が詰まり、加熱するとトローリとろける食感になるポワロー。より太いものが珍重され、たけなかファームの極太LLサイズは缶コーヒー並の太さまで成長させて出荷します。9月から11月中旬に収穫したものを氷温貯蔵して鮮度管理しているため、4月頃まで安定的に手に入ると、東京の3つ星レストランをはじめ、全国のレストランで愛用されています。

【北海道発】とかちポワロー

とかちポワロー極太LL1本 756円(税込)
※送料は配送地域によって異なります。

「とかちポワロー」を使ったレシピはこちら


ポワローを教えてくれた渡辺シェフとの出会い

十勝平野に広大な農地を持つ「たけなかファーム」。章さんの曾祖父の代に入植し、北海道の4大作物、小麦・ビート・馬鈴薯・豆類を手掛けてきた畑作農家です。祖父や父の背中を見て育った章さんは、大学卒業とともに迷うことなく就農。将来を見据えて新しい作物を探していた頃に、東京や長野の名店で修業を重ね、帯広に店を構えたフレンチレストラン「オランジュ」の渡辺雄二シェフと出会いました。生産者と消費者を結ぶテーマで行なわれたシェフの講演会に参加し、大きな刺激を受けた章さんは、講演後に後を追いかけ「今必要としている野菜は何ですか?」と質問。渡辺シェフが「フレンチに欠かせないポワローだね」と回答したことから、ポワロー栽培への第一歩を踏み出すことになったのです。

好奇心のおもむくまま何度だってチャレンジ

ポワローを見たことも食べたこともなかった章さんでしたが、渡辺シェフの店で試食するや否や、確かな可能性を感じました。自らを「好奇心の塊」と呼ぶように、好奇心のおもむくままアメリカから種を取り寄せて栽培に着手。ところが長ネギ系の知識が乏しい上、欧米とは土も水も気候も異なり、なかなか出荷できるレベルに至りません。ヨーロッパ各地から50種類ほど種を取り寄せ、力強く育つように土作りから見直すなど、悪戦苦闘の末、ようやく納得のいくものができ上がりました。渡辺シェフからもゴーサインを得たところで「とかちポワロー」と命名。十勝の土壌と自らの努力が生み出した、オリジナル野菜であるという誇りが込められています。

章さんとポワローを結びつけてくれた帯広のフレンチレストラン「オランジュ」の渡辺雄二シェフ。現在も交流は続いており、品質だけでなく販路拡大や6次産業への取り組みなど、シェフからのアドバイスは多岐にわたる。
章さんとポワローを結びつけてくれた帯広のフレンチレストラン「オランジュ」の渡辺雄二シェフ。現在も交流は続いており、品質だけでなく販路拡大や6次産業への取り組みなど、シェフからのアドバイスは多岐にわたる。

まもなく収穫期を迎えるとかちポワローをチェック。ここから11月中旬まで順次収穫できるよう、ゆっくりと太らせる。今年はなかなかの出来映えらしい。 まもなく収穫期を迎えるとかちポワローをチェック。ここから11月中旬まで順次収穫できるよう、ゆっくりと太らせる。今年はなかなかの出来映えらしい。


長ネギ用の収穫機を使って掘り起こし、コンテナに積んで倉庫へ運ぶ。倉庫では家族とパートさん総出で青い部分と根を切り取り、出荷作業を行なう。
長ネギ用の収穫機を使って掘り起こし、コンテナに積んで倉庫へ運ぶ。倉庫では家族とパートさん総出で青い部分と根を切り取り、出荷作業を行なう。

総作付け面積58ヘクタールのうち、とかちポワロー・根セロリ・ベルギーエシャロットが占めるのは2ヘクタールのみ。今後はこの割合を増やしていきたいそうだ。最近では大手スープ専門チェーンとの取引も本格稼働し、オーダーを受けてパクチーの栽培もスタートさせた。
総作付け面積58ヘクタールのうち、とかちポワロー・根セロリ・ベルギーエシャロットが占めるのは2ヘクタールのみ。今後はこの割合を増やしていきたいそうだ。最近では大手スープ専門チェーンとの取引も本格稼働し、オーダーを受けてパクチーの栽培もスタートさせた。

販路を広げたがむしゃら営業

出荷できるようになったものの、認知度の低いポワローを市場に出しても安く買い叩かれるばかり。これではとかちポワローが可哀想だと、自ら販路を開拓する作戦に出ました。まず取ったのは、ミシュランガイド東京に掲載されている50のレストランに、とかちポワローを直接送り込むという強行手段。数軒のレストランから連絡があり、取引に至ったのは3つ星を獲得しているフレンチレストランでした。最初に納品する時はとんでもなく緊張したそうです。さらに全国のレストラン5,000軒へダイレクトメールやFAXを送付したところ、100軒ほどから反応がありました。手塩に掛けたとかちポワローを信じ、がむしゃらに営業して生まれた縁は今も健在です。

シェフ達の思いに応えたくて

販路を広げる上で、半年近くにわたって安定供給できることも大きな強みとなりました。国内でポワローを栽培する農家はあっても、少量多品種の一つに過ぎないことがほとんど。たけなかファームでは2ヘクタール程を使って栽培し、9月から11月中旬まで収穫します。マイナス1度で氷温貯蔵すれば4月頃まで出荷が可能で、まとまった量がタイムリーに必要となるホテルやレストランから重宝される存在に。ポワローと共に栽培し始めた根セロリやベルギーエシャロットも評判よく、取引先は順調に増えました。しかし仲買を入れない分、シェフ達からそっぽを向かれてしまったら収入はゼロ。最高の味を表現したいと考えるシェフ達の元に、最高の品質で届けられるよう、常に真剣勝負で臨んでいます。


農業とは子育てのようなもの

土作りこそ農業の原点と考える章さん。完熟させた堆肥などでカルシウムやミネラルを補い、微生物の働きを活性化させています。しかし、栄養過多では病気になったり、成長が早過ぎて身が割れるなど弊害が生じるので、毎日毎年が試行錯誤の連続。「ポワローはゆっくり成長させることで身が締まり、甘さが凝縮します。それをコントロールするのが微生物。目に見えない彼らに働きかける訳ですから、思い通りにならなくて当然です。子育てと一緒で、日々お世話させてもらっている感じですね」と畑に向ける瞳は慈しみに溢れていました。後日、とかちポワローを試食したところ、甘みと旨味の奥深さに大いに感動!渡辺シェフの「彼の人柄が現れていますよ」という言葉が全てを物語っていました。

大地が教えてくれるので「とにかく来てみてください」

とかちポワロー以外の野菜も一気に収穫期を迎える秋は、忙しさもピークに達します。そんな中でも全国から訪れる子どもたちの受入れには積極的。土と戯れた子どもたちの目には輝きが宿り、その姿を見るのが何よりの喜びだそうです。「僕は365日忙しいので、見学や取材の依頼があった場合は『とにかく来てみてください』とお伝えします。多くを語らなくても、感じていただけるものがココにあると思いますから」と章さん。取材時も繁忙期でしたが、作業する手を止めて分かりやすく質問に答えてくださり、最後には「ご自身が他のライターさんと違うと思う点は?」「うちの農園、どう思いますか?」と逆取材。さすが「好奇心の塊」だと感心しつつ、秋風が吹き始めた十勝平野を後にしました。

章さん一家の住まいは、曾祖父が入植した大正11年に建てた家を改築したもの。農業に導いてくれた曾祖父へのリスペクトが垣間見える。3人のお子さんの賑やかな声と、おいしいご飯の香りに満たされた素敵な空間だった。
章さん一家の住まいは、曾祖父が入植した大正11年に建てた家を改築したもの。農業に導いてくれた曾祖父へのリスペクトが垣間見える。3人のお子さんの賑やかな声と、おいしいご飯の香りに満たされた素敵な空間だった。

とかちポワローを15分ほど塩水で茹で、茹で汁に漬けたまま冷やし、冷製仕立てにしていただいた。とろける寸前の歯ごたえと甘み、旨味が素晴らしい。すき焼きに入れても主役級の存在感を放つ。
とかちポワローを15分ほど塩水で茹で、茹で汁に漬けたまま冷やし、冷製仕立てにしていただいた。とろける寸前の歯ごたえと甘み、旨味が素晴らしい。すき焼きに入れても主役級の存在感を放つ。


※掲載の内容は、2015年8月現在のものです。