無農薬・有機肥料で育てる「トマト」
おいしさと手軽さで人気のトマトは夏野菜の代表格。
「トマトが赤くなると医者が青くなる」ということわざも
あるほど栄養価が高く、最近は抗酸化作用を持つ栄養素・
リコピンでも注目を集めています。今回は、無農薬・有機肥料で
トマトを育てている「もりた農園」を訪ねました。
すっきりとした味わいの夏のトマト
温室栽培や品種改良により1年中市場に出回るトマト。冬場のハウス栽培で糖度をコントロールしたフルーツトマトなどの高級種も多くみかけるようになりました。旬である夏場のトマトは、水分が多く、甘みと酸味のバランスがよい、すっきりした味が楽しめます。もりた農園で育てられているのは「桃太郎」という品種。20年以上、日本の市場の大半を占めるおなじみのトマトです。
もりた農園は野菜を作り始めてから10年とまだ歴史が浅いのですが、最初から無農薬・有機肥料で栽培を続けているこだわりの農家です。葉ものを中心に10種類の野菜を育てており、県の安心食材の認定を受け、安全や味にこだわる家庭や飲食店の方々から高い評価を得ています。
取材に訪れた5月中旬は、トマトはまだ収穫前の実が青い状態。それでもハウス内は、ほのかにトマトの香りが漂っていました。トマトは茎の下から順に花が咲き、実をつけていきます。一番下にはまるまるとした青いトマト、そして上の方にはこれから花を咲かそうとしているつぼみがスタンバイしていました。
取材時にはまだ青い実、これから半月をかけて完熟していく
青い実がなる木の上段には大きな黄色い花が咲く
手間をかけて無農薬・有機肥料で育てる
多くの農家が農薬や化学肥料を使用して野菜や果物を育てています。もちろん、国が許可したもの、範囲内での使用なら支障はありません。もりた農園では、より自然のおいしさにこだわるとともに農家自身の安全を考えて、開園当初から無農薬・有機肥料での栽培を実施しています。無農薬・有機肥料で育てる際に一番気をつけないといけないのは、病気と害虫。これらから農薬を使わずにトマトを守るために多くの手間や工夫が必要になるのです。
同じ場所で同じ農作物を作り続ける「連作」を行うと病気が発生しやすくなり、品質も下がってしまいます。そこで、季節毎に違う農作物を育てて土壌の栄養バランスを保ち、病気を発生しにくくする「輪作」での多品種栽培を行っています。トマトは2月に種を蒔き、育苗ハウスで育てた苗を4月の始めに栽培ハウスに定植します。この際に、幼虫や雑草などトマトの生育に悪影響を与えるものを取り除きます。もちろん毎日、ハウス内を巡回し、雑草を取ったり、余分な実を取り除く摘果を行ったり…とこまめな手作業が続きます。もりた農園はハウスを利用していますが、これは、温室栽培のハウスではなく、雨よけや虫よけを目的としたもの。害虫の発生により、枯れてしまったり、葉や実がかじられたりするのを防ぐためです。通風口や入り口にも網を張って外部からの虫の侵入を防ぎ、また雨天での作業を効率よく行うために導入されています。
また、品種そのものの持つ味を大切にしたいと、トマト栽培では一般的な接ぎ木栽培(病気に強い品種を台木に使い、栽培品種と接ぎ木して育てる方法)をせず、自根での栽培を行っています。ほかにも、受粉にはクロマルハナバチを使用し、肥料には米ぬかなどの天然の原材料を使った自家製のものを用いるなど、自然にこだわった栽培方法を続けています。
1棟40〜50mの雨よけハウスが4棟あり、1つを育苗用、残り3つを生育用として使用
トマトの栽培用ハウスには、660本の苗木が植えられている
雑草もなく、手入れが行き届いたハウス内
おいしく食べてもらうには鮮度が大切
もりた農園のもう一つのこだわりは鮮度。せっかくおいしいものを作っても鮮度が落ちてしまっては、本当のおいしさをわかっていただくことはできないと、もりた農園では、お客さんの手元に届くまでを管理するために、農園での直接販売のほか、地元の直売所やスーパー、インターネットでの販売のみで卸売市場への出荷は行っていません。収穫は夜明け前から行い、当日の朝には直売所にとれたての野菜が並びます。お客さんはリピーターが多く、中には野菜嫌いのはずなのに、もりた農園の野菜は食べるという子どももいるほど。そんな子どもの正直な反応、それがおいしさの証であり、もりた農園が無農薬・有機肥料による栽培を続ける理由なのかもしれません。
農家産直店「ファーマーズだいち」内のもりた農園のコーナー
桃太郎の収穫は6月中旬〜8月上旬まで
もりた農園 森田 英治さん
無農薬栽培は、手間がかかると同時に病気が一度発生すると生産量が激減するというリスクもあります。しかし、おいしく体にいいものを提供できるということに喜びと誇りを感じ続けています。当農園の作る野菜は一般に販売されているものよりは少し高いのかもしれませんが、やがて体の一部になるものなので、健康のためにおいしく体にいいものを選んでいただければと思っています。
- [取材協力]
- もりた農園 三重県鈴鹿市安塚町793 TEL:059-382-2707
http://www.ansinyasai.jp/ - ※生産数に限りがあるため、大量のオーダーにはお応えできない場合がありますので、ご了承ください。
※掲載の内容は、2009年6月現在のものです。