きっちんぷらす
スチコンレシピ 1237 recipe

こだわりの伝統栽培が支える「京たけのこ」

春の味覚の代表格といえば「たけのこ」。堀りたてのたけのこは、
この時期にしか楽しむことができない格別の味といえるでしょう。
春の訪れを告げるたけのこを、昔ながらの栽培方法で作り続ける
「京たけのこ 伝統栽培を守る会」を訪ねました。

発祥の地、京都・長岡京市

 古くからたけのこの産地として有名な京都・長岡京市。一般になじみのあるたけのこは「孟宗竹(もうそうちく)」という種類の竹から採れるもので、中国・抗州からその原種を持ち帰った僧がこの地に植えたことから、長岡京市は日本での「孟宗竹発祥の地」とされています。
  京たけのこは、高い香り、やわらかくもしっかりとした食感、ほのかな甘みがあり、たけのこ特有のえぐみが少ないのが特長で、高級料亭をはじめ多くの料理店で利用されています。こうした上質のたけのこが生まれる背景には、この地方がたけのこの成長に適した気候や土壌であることに加え、生産者の手間を惜しまない栽培方法と長年継承されてきた技術があるのです。


長岡京市・寂照院にある「日本孟宗竹発祥之地」の碑


朝掘りの京たけのこは、味・香り・食感すべてが一級品



1年をかけて育まれるおいしさ

 たけのこは時期がくれば裏山に勝手に生えてくるというイメージを持つ方も多いと思いますが、京たけのこが裏山に勝手に生えるたけのこと大きく違うのは、管理された場所で1年という歳月をかけ、手間ひまかけて育てられるところにあります。今回、取材に協力いただいた「京たけのこ 伝統栽培を守る会」の生産者の方々は、200年以上続くといわれる伝統栽培によりたけのこを育てています。たけのこが育つ場所は、うっそうとした竹藪ではなく、たけのこを作るために美しく手入れされた「たけのこ畑」なのです。
  たけのこ畑の手入れは、1年間休むひまがありません。収穫の時期には、将来、たけのこを生むために残す「親竹」を選び、初夏の頃からは、肥料を撒いたり、親竹が大きくなりすぎないように竹の先端を折ったり、親竹に栄養を行き渡らせるために間引きをしたりという作業がおこなわれます。親竹同士は2m以上の間隔を保ち、また高さも抑えられているため、たけのこ畑には十分な太陽光が差し込み、親竹に十分な栄養を送り込むことができるのです。栄養が十分行き渡った土壌は当然、ほかの植物たちにも好条件となり、たくさんの雑草も生えるため、こまめな草引きもかかせません。秋以降には、仕上げの土壌作りが始まります。たけのこ畑一面にわらを敷き詰め、その上に薄く赤土をかぶせていきます。わらを敷くことで土の中に空気の層を作るだけでなく、わら自体がやがて肥料にもなります。さらに、赤土の保温・保水効果により、たけのこの成長を促していくのです。できあがった土壌は一歩踏み入れると足が沈むほどにふかふかしています。京たけのこの特長である肉質がやわらかく、姿の美しいたけのこは、この土壌作りから生まれるといっても過言ではないでしょう。


手入れが行き届き、明るく光がさし込む、たけのこ畑


一部のたけのこは「親竹」として、収穫せずに残される


わらを敷いた上に赤土をかぶせる作業は「土もち」と呼ばれる



収穫を支える、熟練の技

 京たけのこのおいしさの秘密は、収穫の方法にもあります。たけのこは日に当たると乾燥して味が落ちてしまうため、夜明け前に土の中にある状態から掘り出されます。赤土の表面にわずかにできたひび割れからたけのこの場所をみつけだし、「ほり」という刃の長い独特の鍬で掘り出していきます。たけのこの先が少し見えるくらいに土をかきだし、それを見て地下茎とたけのこの位置を判断します。そして、ほりを土中に入れ、たけのこを傷つけないように地下茎と切り離して、掘り出すのです。こうして掘り出されたたけのこは、野に生えるたけのこと違い、全体的に白っぽい色をしています。
  春の訪れを極上のおいしさとともに届けてくれる長岡京の京たけのこは、全国で高い評価を受けています。その陰には変わらず伝統栽培を守り続ける生産者の方々の姿があります。効率が優先される現代において、手間のかかる昔ながらの栽培方法で作り続けられる京たけのこ。そこには、春だけしか味わえないおいしさを全国に届けたいという生産者の想いがたくさん詰まっているのです。


目に見えない土中での作業は経験と勘が頼り、まさに熟練の技


掘りおこされたばかりの京たけのこ



京たけのこ 伝統栽培を守る会 小川 修司さん

品種や栽培方法の改良によって、さまざまな農産物がいつでも食べられるようになりましたが、その一方で季節感が薄くなってきているように感じられます。たけのこは、それができないだけに、より春を感じていただける作物であると思っています。たけのこを作るために1年中、竹林の手入れを続け、伝統栽培を守り続けている生産者たちがいることを、京たけのこを通して全国の皆様に知っていただければと思います。

[取材協力]
京たけのこ伝統栽培を守る会京たけのこ 伝統栽培を守る会 小川食品工業株式会社(事務局)内
京都府長岡京市神足四反田13 TEL:0120-438-166
http://www.kyotakenoko.gr.jp

※掲載の内容は、2009年3月現在のものです。