Vol.4 ワンランク上の仕事を積極的に与えるか
スタッフには、まず基本的な仕事をしっかりこなしてもらいたいと経営者や店長は考える。しかし、基本的な仕事だけでは能力が向上しない。かといってワンランク上の仕事を与え過ぎると、スタッフが嫌がるのではないかという心配もあるが…。
スタッフがなかなか成長してくれない…。基本的な仕事はできるけど、それ以上ができない…。こんな悩みを持っている店長や経営者は多いのではないだろうか?
確かに飲食店は、働くスタッフがフリーター・主婦・学生まで様々で、スタッフそれぞれにいろいろな個性があるので教え方が難しい。どんな教え方で成長を促すべきか、迷うところだ。
そこで、スタッフの育て方の一つとして参考にしてもらいたいのが、“どんどん実力以上の仕事を与える”という方法である。一定の仕事をこなせるようになったスタッフには、すぐにもうワンランク上の仕事を与えるのだ。その際、大事なのが、単に「やってくれ」というのではなく、なぜその仕事をやってもらうのか、その理由を具体的に説明すること。いままでの仕事の成果を評価していることを伝えたうえで、新たな仕事をしてもらうのだ。
次々と新しい仕事を頼むとスタッフが嫌がるのではないかと心配するかもしれないが、そのスタッフの仕事ぶりを認めたうえで新たなチャレンジという環境を打ち出してあげれば、高いモチベーションで取り組んでもらえるだろう。誰かに認められたいというのは、人間に共通する心理だからだ。
スタッフからすれば、自分の仕事ぶりがステップごとに次から次へと認められていくわけだから、能力の向上が実感できる。限界を自分で決めてしまうと、能力が向上する壁になってしまうが、その限界をはずしてあげることにもなるのだ。
ただし、ここで確認しておきたいのは、ワンランク上の仕事は、すべてのスタッフに通り一辺に与えるものではなく、店長から見て「この人ならできる」というスタッフから順々に与えて、ステップアップしたスタッフを見本にしていくことだ。すると、同じ職場の中で、仕事のランクが上がる人、いつまでも変わらない人の差が出てくるが、この差も大切なことである。同時に、そのワンランク上の仕事をなぜ頼むのか、他のスタッフにも分かるように選定基準を明確にオープンにすることが大事である。『よろずや食堂』においても、スタッフに対して積極的にワンランク上の仕事を与えた方がよいだろう。
仕事の区分・レベルを 細かく設定して能力向上
地方都市にある和食ダイニングS店は150坪もある店だ。スタッフも25名を超え、以前のS店はキッチンが3段階、ホールは2段階の仕事区分を設けていた。しかし、それではスタッフの能力を伸ばせないと考え、仕事の区分を細かく設定。「笑顔」「技術」「体力」の3つのカテゴリーを設け、さらにそれを10段階に分けて合計30の区分にした。
それぞれのカテゴリーの例は、「笑顔」がコミュニケーションサービス全般に関わること。お客様との会話の促進や、お客様の特性に合わせたサービスなどである。「技術」は料理やドリンクの調理・提供技術、「体力」は清掃や皿洗いなどだ。
このように区分を細かくし、常にワンランク上の仕事目標を設定して、スタッフの能力向上と個性を生かす育成を実現している。
評価した上で 新たな仕事を!
スタッフの育て方では“どんどん実力以上の仕事を与える”という発想も大切。それまでの仕事ぶりを評価したうえで、ワンランク上の仕事を与えるのだ。スタッフは自分の仕事ぶりが認められ、能力の向上を実感することができ、それがやる気につながる。