きっちんぷらす
スチコンレシピ 1193 recipe

【新潟発】せきかわ農園の里芋

せきかわ農園の里芋

古くは縄文時代より栽培されてきた里芋。豚汁や煮っころがしなどの定番メニューに加え、山形県の「芋煮」や宮崎県の「ぬた芋」といった各地の郷土料理にも多く使用されており、新潟県では根菜や鶏肉などを出汁で煮た「のっぺ」に欠かせない食材として生産されてきました。中でもせきかわ農園で栽培されている里芋は、ぬめりの強い濃厚な旨みと、絹のような食感を持ち、プロの料理人から一般消費者まで広く支持を集めています。

【新潟発】せきかわ農園の里芋

1箱(3kg)
4,100円(税・送料込) ※10月中旬〜3月中旬まで出荷予定

「里芋」を使ったレシピはこちら


川の氾濫により形成された肥沃な土地で里芋づくり

福島県から流れる阿賀野川と、新潟県内の清流・早出川に挟まれた五泉市。度重なる氾濫に苦しんできた地域でしたが、流れてきた土が堆積したことで、水はけが良く野菜の生育に適した土壌が形成されました。この肥沃な土地で農業を続けてきたせきかわ農園は、約30年前に里芋の栽培をスタート。現在は色白で雑味のない品種「大和早生(やまとわせ)」を育てています。10代目の関川義之さんは2006年に農家を継ぎましたが、数年経った頃に「より安全性と信頼性の高い里芋をつくりたい」と決意。農薬と化学肥料を通常の半分以下に減らした特別栽培に乗り出しました。

コスト度外視で始めた特別栽培

五泉市には200軒ほどの里芋農家がありますが、特別栽培のみで育てているのはせきかわ農園だけ。その理由は、栽培に圧倒的な手間とコストがかかり、大幅に収量が落ちてしまうからです。それでも一歩踏み出したのは「お客様の声に応えたかったから」と関川さん。農作物の信頼性や安全性を求める声が大きくなってきたことを肌で感じ、思い切ってゼロからチャレンジしました。そして試行錯誤の結果、食物を活性化させる有機資材を導入して農薬の使用回数を減らし、牛糞と鶏糞の入った堆肥で里芋の食味と栄養分を向上させる栽培方法にたどり着きました。現在は収量も増え、栽培面積は生産開始時と比べて約5倍に広がっています。

4月中旬に種芋を植え、10月中旬から収穫開始。外気に触れて痛まないよう、土をつけたまま一株ごと大事に掘り出していく。獲れた里芋は貯蔵庫で保管し、春先の3月まで出荷する。
4月中旬に種芋を植え、10月中旬から収穫開始。外気に触れて痛まないよう、土をつけたまま一株ごと大事に掘り出していく。獲れた里芋は貯蔵庫で保管し、春先の3月まで出荷する。

出荷する際は、まず根や土をきれいに取り除く。そしてお客様のニーズに合わせて形、大きさで選別する。収穫から保管、出荷に至るまですべて手作業。 出荷する際は、まず根や土をきれいに取り除く。そしてお客様のニーズに合わせて形、大きさで選別する。収穫から保管、出荷に至るまですべて手作業。


根腐れを起こすと葉に養分が届かず、黄色く変色していく。水分不足も養分不足も、葉にその影響が現れるため、毎日の細かな観察が欠かせない。
根腐れを起こすと葉に養分が届かず、黄色く変色していく。水分不足も養分不足も、葉にその影響が現れるため、毎日の細かな観察が欠かせない。

五泉市で収穫された里芋のうち、大きさや形など一定の基準をクリアしたものは「帛乙女(きぬおとめ)」としてブランド化。せきかわ農園の里芋も数多く採用されている。
五泉市で収穫された里芋のうち、大きさや形など一定の基準をクリアしたものは「帛乙女(きぬおとめ)」としてブランド化。せきかわ農園の里芋も数多く採用されている。

水管理を徹底することで立派な里芋が育つ

関川さんが特別栽培に加えてこだわっているのが、里芋づくりの基本である水管理。毎日、気温や気候の微妙な変化を見極め、ときには朝露の水量まで計算に入れながら水やりを行います。里芋の葉は水分が不足すると縮み始めますが、「それを見つけた時点でアウトです」と、わずかな変化も見逃さない徹底した管理を実施。また、排水対策にも力を入れています。暑い日に畑に溜まった水をそのままにしておくと、水が熱くなり根腐りの原因に。それを防ぐため、専用の機械を使って作土(根が養分や水分を吸収する層)の下にある砂利層まで穴を通し、水が溜まらない構造にしました。「水はけの良い土地ではありますが、さらに工夫することで栄養分が高く、大きな里芋に育ちます」と関川さんは話します。

里芋のイメージを塗り替える味わい

減農薬と有機肥料にこだわった特別栽培、そして徹底した水管理のもと育った里芋は、他にはないキメ細やかでなめらかな食感に。一口食べれば、とろっとした心地よい粘りと、濃厚な味わいが口の中いっぱいに広がります。「筋っぽい」「味が薄い」と言われがちな里芋のイメージを覆す仕上がりです。せきかわ農園特有の食味について関川さんは「肥沃な土地で育ったことに加えて、堆肥に含まれる鶏糞のチッソ成分が味わいを濃く、甘くさせていると思います」とのこと。また、身がギュッと詰まっていて煮崩れしにくいという強みも持っています。


“各地から寄せられる驚きの声

せきかわ農園の里芋の評価は高く、お歳暮や贈り物としても重宝されています。購入した方の反応は「こんな里芋は食べたことがない」「他の里芋はもう食べられない」など、初めて体験した味わいに驚くコメントばかり。その品質はプロの料理人にも認められており、五泉市の飲食店では、多彩な里芋料理が味わえる「里芋懐石」から、里芋を粉にして麺に練りこんだ「里芋麺」というオリジナルメニューまでラインナップ。地域をあげて独創的なメニュー開発が進められているほか、県内外の割烹や料亭などでも使用されています。

“地域農業存続のためにやれることはすべてやりたい

就農当初より、関川さんは近隣の農家と交流を図りながら、知識や技術を身につけてきました。その中で、高齢化や後継者不足の影響により、五泉市の里芋農家が減少していることを実感。そこで現在は、人材育成や販路の拡大など、地域農業を存続させるための取り組みを進めています。「まずは自分たちの生まれ育った場所を大事にしたいですね。それが、おいしい里芋をお客様に届け続けることにつながると思います。とにかくやれることは全部やっていきたい」。穏やかな雰囲気ながらもキッパリとした口調で話す関川さんから、五泉市を代表する里芋農家の強い思いが伝わってきました。

東京の百貨店で開催された「新潟県物産展」に代表として出店。五泉市でも「五泉さといも祭り」などが開催されており、イベントを通したPR活動も積極的に行なっている。 東京の百貨店で開催された「新潟県物産展」に代表として出店。五泉市でも「五泉さといも祭り」などが開催されており、イベントを通したPR活動も積極的に行なっている。

これまで畑に入るのは高齢者の方が多かったが、最近では若い人の姿も見られるという。「機械化を進めていくと同時に、若い方の参入もお手伝いしていきたいですね」と関川さんは語る。 これまで畑に入るのは高齢者の方が多かったが、最近では若い人の姿も見られるという。「機械化を進めていくと同時に、若い方の参入もお手伝いしていきたいですね」と関川さんは語る。


※掲載の内容は、2019年8月現在のものです。