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【北海道発】うえむら農園のホワイトアスパラガス:土をかき分けひょっこり顔を見せるのは讃岐育ちの色白美人

やわらか食感と甘みが魅力「うえむら農園のホワイトアスパラガス」

ヨーロッパでは春の訪れを告げる野菜としてもてはやされるホワイトアスパラガス。日本では北海道や長野が産地として有名ですが、近年では西日本でも栽培が盛んになりつつあります。香川県で米農家を営んでいた植村隆昭さんは、一度定植すれば10年以上も収穫できる、アスパラガス栽培に関心を持ちました。日本一面積の狭い香川県において、効率よく育てられるアスパラガスは画期的な作物だと確信。以来、健康な土づくりやハウスの管理など、培ったノウハウを地元の農家と共有し、全国のレストランやホテルへと共同出荷しています。

【香川発】うえむら農園のホワイトアスパラガス

ホワイトアスパラガス 1kg 3,000円〜
グリーンアスパラガス 1kg 2,000円〜
(税・送料別)

「アスパラガス」を使ったレシピはこちら


400年続いた米づくりに終止符を打ちアスパラガスの将来に賭けてみる

平地にポコッ、ポコッ、とご飯茶碗をひっくり返したような山が点在する讃岐の地。そんな山々に囲まれた三木町で、植村家は400年前から代々農業を営んできました。現当主の隆昭さんも先祖から引き継いだ土地で稲作をしていましたが、日本一面積の小さい香川県では小規模でしか展開できず、将来性が乏しいと危惧。そこで小さな面積でも効率良く栽培でき、差別化できる作物はないかと探していた折に、アスパラガスと出会いました。一度の定植で10年以上収穫が可能で、5月に立茎という処理をすれば夏場まで収穫できると聞き「これだ!」と確信。今から20年前、米農家からアスパラガス農家へ転身する決意をしました。

虫と病気との壮絶な戦いを経て独自の栽培方法を確立

最初の2年間は農協の傘下に入っていましたが、栽培のイロハが分かってきたタイミングで、安全性を追求するため、独立することに。自然食を取り扱うショップにヒアリングすると、安全なアスパラガスを求めるマーケットが確実に存在することを知りました。そこで無農薬栽培に踏み切ったところ、夏場に虫や病気が次から次へとアスパラガスに襲いかかり、まともな収量はおろか、収入も得られません。苦悩の7年間を過ごし、農薬を極力減らして出荷時に農薬を残さない栽培方法を確立しました。結果として香川県知事から特別栽培の認証を受け、食の安全に敏感な消費者からも信頼を置かれています。

3月頃から若い茎が土をかき分けて頭をのぞかせる。収穫したばかりの状態はアスパラガス自身が発する熱で傷んでしまうため、5℃前後の冷蔵庫で一日休ませてから出荷する。
3月頃から若い茎が土をかき分けて頭をのぞかせる。収穫したばかりの状態はアスパラガス自身が発する熱で傷んでしまうため、5℃前後の冷蔵庫で一日休ませてから出荷する。

遮光したものをホワイトアスパラガス、日光に当てたものをグリーンアスパラガスとして出荷。うえむら農園出荷組合では、ホワイト・グリーンの割合は半々だ。 遮光したものをホワイトアスパラガス、日光に当てたものをグリーンアスパラガスとして出荷。うえむら農園出荷組合では、ホワイト・グリーンの割合は半々だ。


3〜4月まで収穫したら、立茎(写真上)をし、葉を茂らせる。すると6月ぐらいから再び若い茎が顔をのぞかせ、ホワイトアスパラガスは7月末、グリーンアスパラガスは10月頃まで収穫が可能になる。
3〜4月まで収穫したら、立茎(写真上)をし、葉を茂らせる。すると6月ぐらいから再び若い茎が顔をのぞかせ、ホワイトアスパラガスは7月末、グリーンアスパラガスは10月頃まで収穫が可能になる。

収穫を終えると旺盛に葉を茂らせたアスパラガスの苗木が自然と枯れてくる。ところどこに可憐な赤い実がなっており、手で潰すと種子が現れた。
収穫を終えると旺盛に葉を茂らせたアスパラガスの苗木が自然と枯れてくる。ところどこに可憐な赤い実がなっており、手で潰すと種子が現れた。

果てしなく追及できる土づくりにのめり込む

虫や病気問題を乗り越えて、次に着手したのが土づくり。微生物の働きなしに語れない農業では、微生物のベッドであり、仕事場でもある土の環境が収量を左右します。成分を数値化して足りないものを補い、微生物が働きやすいように空気含有量や水分量を調整し、土に「地力」を宿すことで、虫や病気に負けない強いアスパラガスが育つといいます。この方法を編み出すまでにかけた時間は、実に17年。ところが隆昭さんはこれをゴールなどと少しも思っていない様子です。「土づくりは果てしなく追求できる、終わりのないテーマなんです」と、困惑とワクワク感が入り混じった表情で語ってくれました。

色白やわ肌美人のヒケツは遮光シートにあり

うえむら農園では10年前からホワイトアスパラガスの栽培を始めました。ホワイトアスパラガスはグリーンアスパラガスの倍近く値が張りますが、その理由は白さを保つために遮光する手間暇をかけるから。様々な方法を試した結果、遮光性の高いビニールシートで覆う方法が、この地で栽培するのに適していると判断。土で覆うやり方よりもアスパラガスにストレスがかからないため、皮が硬くなったり厚くならず、やわらかいと評判です。しかも春だけでなく7月末まで長期間にわたって安定供給できるとあり、フランス料理を始め、中華料理など様々なジャンルのシェフから大変重宝されています。


待っているだけではダメ 出会いは自分で作るもの

手塩にかけたアスパラガスを最高の状態で楽しんでもらうためには、最大限に活かしてくれる料理人とのコミュニケーションが必要です。そこで隆昭さんはプロの料理人が集まる商談会や勉強会があると積極的に参加。雑誌やテレビで興味を持ったお店には、自ら足を運び、お互いの人となりに惚れ込んで取引が始まることも多いとか。「どんなに手をかけても毎年収量が増減したり、大きさに凸凹が生じるのが農産物の宿命です。その点を理解してくれる方と、末長くお付き合いできたらうれしいですね」と隆昭さん。県内外のシェフと直接取引し、時間を見つけて挨拶を兼ね、食事に出かけるのが何よりの楽しみだといいます。

これからの人生は地元への恩返しに

隆昭さんは培ったアスパラガス栽培のノウハウを近隣の農家の皆さんに惜しみなく伝授し、2015年に「うえむら農園出荷組合」を立ち上げました。「ここからは自分を育ててくれた三木町への恩返しにあてる人生です。農家の皆さんを応援したい…その一心でこの組合を運営しています」と趣旨を説明してくれました。組合員が収穫したアスパラガスはB級品でも一手に引き受け、知識と人脈を駆使して嫁入り先を見つけ出すといいます。「地域のためにやれることは全てやり遂げ、80歳の誕生日が私の命日!」と言い切り、ハハハと声高らかに笑う隆昭さん。この潔さと義理堅さに、組合員やシェフたちは全面的に信頼を寄せるのでしょう。

17年もの歳月を費やして作り上げた土。油粕、ぬか、魚粉などを発酵させたボカシ肥料と、籾殻や牛糞などをバランスよく配合し、微生物が働きやすい環境づくりを心がけている。
17年もの歳月を費やして作り上げた土。油粕、ぬか、魚粉などを発酵させたボカシ肥料と、籾殻や牛糞などをバランスよく配合し、微生物が働きやすい環境づくりを心がけている。

フランスではマルシェに並ぶ日を待ちわびる人も多いホワイトアスパラガス。卵とバターをぜいたくに使ったオランデーズソースと合わせると、メインディッシュにも匹敵するご馳走になる。
フランスではマルシェに並ぶ日を待ちわびる人も多いホワイトアスパラガス。卵とバターをぜいたくに使ったオランデーズソースと合わせると、メインディッシュにも匹敵するご馳走になる。


※掲載の内容は、2017年12月現在のものです。