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【北海道発】折笠農場のじゃがいも:常識を超える「おもしろい!」味わい。それが新・十勝クオリティー

寝かせて際立つ甘さと旨さ「折笠農場のじゃがいも」

南米の高原地帯で生まれたじゃがいもは、約2000もの品種が存在し、世界中の食卓で愛され続けています。原産国と気候・風土で共通点の多い北海道では、明治以降に本格的な栽培が始まり、今では国内生産量の8割近くを誇る名産地。その4割を占めるのが十勝地区で、100年以上前に入植した折笠農場は、じゃがいもだけで30ヘクタールもの栽培面積を誇る大規模農場です。現在は有機JAS認証を受けた6ヘクタールの畑でじゃがいもの自然栽培を実施。安心と安全だけでなく、並々ならぬ探究心で、味わいにも一切の妥協を許しません。

【北海道発】じゃがいも

自然栽培「さやあかね」
1kg 235円(税・送料別)

  • ※30kgから注文受付。
  • ※時期により取り扱い品種が異なりますので、折笠農場までお問い合わせください。

「じゃがいも」を使ったレシピはこちら


豊かな大地を取り戻すため今から50年前に緑肥を導入

生い茂る葉に覆われた畑と、収穫を終えてならされた土肌、そしてそれらを分かつようにそびえる唐松の防風林が、はるか向こうまで連続する十勝の大地。広大な平野の大部分を占めるのが、ビート(砂糖大根)、じゃがいも、大豆、小麦、玉ねぎ畑です。100年前にこの地で農業を始めた折笠農場でも、代々メイン作物としてビートを栽培。しかし今から遡ること50年前、4代目で健さんの父である秀勝さんが、化学肥料を大量に必要とするビート栽培に疑問を抱きました。土が痩せていくのを感じた秀勝さんは、かつての豊かな土壌に戻そうと緑肥(田畑へすき込む肥料用の植物)に着目。収量の安定するじゃがいもへとメイン作物を転向し、減農薬での栽培をスタートさせました。

運命的な出会いを果たし自然栽培へと舵を切る

親子二人三脚で減化学肥料・減農薬栽培のじゃがいもを取引先に送り出し、評価を得られるようになりました。しかし「それでも農薬は使っている」というジレンマが2人を悩ませます。すると今から18年前、運命的な出会いが訪れました。「奇跡のリンゴ」で知られる自然農法家・木村秋則さんが折笠農場へやってきたのです。十勝の大規模農家が立ち上がらないと、自然栽培は広がらないと考えた木村さん。彼が白羽の矢を立てたのが、いち早く緑肥栽培を始めた折笠農場でした。秀勝さんと健さんは木村さんの考えに大いに共感。この出会いをきっかけに自然栽培への道のりを歩むことになり、平成23年には総作付面積95ヘクタール中、28ヘクタールが有機認証を取得しています。

北の大地に遅い春が到来する5月の初旬、種芋を植え付けが始まる。30ヘクタールという広大なじゃがいも畑に家族とスタッフ1人で臨む。
北の大地に遅い春が到来する5月の初旬、種芋を植え付けが始まる。30ヘクタールという広大なじゃがいも畑に家族とスタッフ1人で臨む。

9月初旬から順次収穫が始まる。今年の出来栄えも上々。イギリス製の大型トラクターで、東京ドーム1個半分の畑に3日間を費やして収穫する。 9月初旬から順次収穫が始まる。今年の出来栄えも上々。イギリス製の大型トラクターで、東京ドーム1個半分の畑に3日間を費やして収穫する。


収穫したじゃがいもは貯蔵庫にて保管。写真は昨年収穫された「さやあかね」「シャドークイーン」「インカのめざめ」「ノーザンルビー」。みずみずしい断面に驚くばかり。
収穫したじゃがいもは貯蔵庫にて保管。写真は昨年収穫された「さやあかね」「シャドークイーン」「インカのめざめ」「ノーザンルビー」。みずみずしい断面に驚くばかり。

総作付面積95ヘクタールのうち、有機JAS認証を受けている畑は28ヘクタール。じゃがいもの他、大豆、小豆、黒豆、小麦の自然栽培も手がけ、きな粉や小麦粉に加工する。
総作付面積95ヘクタールのうち、有機JAS認証を受けている畑は28ヘクタール。じゃがいもの他、大豆、小豆、黒豆、小麦の自然栽培も手がけ、きな粉や小麦粉に加工する。

安全だけではダメなんだ おいしくなければ意味がない

木村さんから受けた「困った時は自然を見ろ」「自然をとことん理解しろ」「原産地の気候を知れ」との教えを元に、自然と対話を始めた秀勝さんと健さん。肥料を断つことで、自然のサイクルが見えてきたと言います。あるがままの自然を理解し、自然に対して最低限のマナーを守り、それを継続することが自然栽培の原理原則。しかし、食べ物である以上、「おいしさ」が伴わなければ市場での競争には勝てません。安定供給できて高品質で低単価。のちに社訓として掲げることになる「EXCELLENTE QUALITE PRIX RAISONNABLE(仏語で高品質・低価格の意)」を具現化するために、品種の選定を何度となく繰り返す日々が始まりました。

厳しい選抜選手権を経て「さやあかね」デビュー

地元の畜産大学の先生や、じゃがいも育種のプロの協力を受け、今まで育てたじゃがいもの品種は何と1000種類にものぼるそう。病気に強く、なおかつ味の良い品種を選び抜き、毎年40種ほど育て続けています。中でも思い入れがあるのは「さやあかね」。北見農業試験場から要請を受け、数年間にわたり折笠農場と取引先で試食アンケートをとり続け、そのデータを反映した結果、世に送り出された品種です。収穫当初は雑味がなくスッキリとした味わいですが、でんぷん質が糖に変性しやすく、寝かせることで甘みが増して魅力を発揮。本州ではあまり知名度のない品種ながら、そのおいしさに日本を代表する中華料理のシェフも唸り声を上げたと言います。


「おもしろい!」を引き出す新・十勝クオリティーを目指して

地元開催のマルシェに出店し、自然栽培の「さやあかね」を使った冷製ポテトスープを販売した時のこと。若い女性がこのスープを飲み「やばい!おもしろい!」と歓声を上げたそうです。おいしさが彼女の常識を超え、「おもしろい」という言葉を引き出したのでしょう。それを聞いた健さんは「これから必要とされるのは今以上の『十勝クオリティー』。“おいしい”の先にある“おもしろい”味を創造しなければ」と気付かされたと言います。先人たちが原野を切り開き、血の滲むような努力をしたから今がある。豊かな土壌は一定の品質を約束してくれるけれど、甘えていてはだめ。期待以上のおいしさと徹底した安全性を食卓に届け続けるのが使命だと、熱く語ってくれました。

おいしさの記憶が次の時代を動かしていく

取材の数日後、オーダーしたじゃがいもが折笠農場から届きました。「さやあかね」を蒸し、北海道産のバターを落として食べてみたところ、上品な甘さと旨味、そして他の品種にはない軽やかな食感に目を見張りました。取材の終盤にうかがった「この前、娘に『私、こんなにおいしいものに囲まれて幸せだよ』と言われたんです。おいしさの記憶は絶対に薄れません。この記憶が次世代でも必要とされる農業を育てます」という健さんの言葉が思い起こされます。今年の出来栄えも上々で、悪い要素が見当たらないとのこと。日本のあちこちで、新たな「おいしさの記憶」、はたまた「おもしろい記憶」が芽生えるに違いありません。

北海道内で開催されるマルシェへも積極的に出店。ブイヨンなどを使用せず、オーガニック素材のみで作った冷製ポテトスープは大好評だったそう。
北海道内で開催されるマルシェへも積極的に出店。ブイヨンなどを使用せず、オーガニック素材のみで作った冷製ポテトスープは大好評だったそう。

有機JAS認証を受けた畑で自然栽培した「さやあかね」。牧草だけを食べて育ったグラスフェッド牛の乳から作ったバターとの相性は最高だ。
有機JAS認証を受けた畑で自然栽培した「さやあかね」。牧草だけを食べて育ったグラスフェッド牛の乳から作ったバターとの相性は最高だ。


※掲載の内容は、2017年9月現在のものです。